ヒナフキンの縄文ノート

スサノオ・大国主建国論から遡り、縄文人の社会、産業・生活・文化・宗教などの解明を目指します。

縄文ノート114 縄文アーチストと「障害者アート」

 9日、埼玉県立近代美術館の障害者アート企画展「LOOK ART ME!!」を見てきました。東京新聞でこの企画展があることを妻が見つけたのです。https://www.tokyo-np.co.jp/article/147737

   月1回は美術展・博物館・音楽会・映画に行きたいと思っていたのですが、この数年、原稿書きに集中しており、特に車を手放してからは出不精になっていました。今回は、「縄文アーチスト障害者」仮説を確かめる目的もあって、すぐに自転車をこいで出かけました。

 この企画展は12回目で、障害者週間(3〜9日)に合わせ、今年は8~12日に開催されています(なんと入場無料)。

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1.縄文土器デザインの分析から

私は縄文土器の縁飾りは、土器鍋でイモや豆、米などを煮た「ポンガ(沸騰)」の喜びを吹きこぼれとして表し、「火焔型土器」に見られるこれまで「鶏頭」などとされてきた突起は「龍神=龍蛇神=トカゲ蛇神」説として提案し、縄文土器の製作者は「障害者アーチスト」と考えてきました。―縄文ノート「30 『ポンガ』からの『縄文土器縁飾り』再考」「縄文36 火焔型土器から『龍紋土器』 へ」「52 縄文芸術・模様・シンボル・絵文字について」参照

 

③ わが家では草間彌生氏(松本市生まれ)の水玉模様の黄色いカボチャのリトグラフを飾っていますが、水玉を書いていると落ち着くという統合失調症であった氏の作品や繰り返しの多い障がい者アートと、縄文デザインの関係についてもずっと考えています。

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 1つの仮説ですが、縄文時代に知的障がい者は神使として特別の地位・役割を与えれ、霊(ひ)信仰の縄文土器製作に携わっていた可能性があるのではないか、と考えています。

 草間彌生さんの男根で埋め尽くしたベッドやイス、壁面の作品を見ていると、草間さんは石棒(男根)崇拝を行っていた縄文人ではないかと思ってしまいます。(縄文ノート52 縄文芸術・模様・シンボル・絵文字について)

 

2.「縄文アーチスト」がいっぱい

 前に見たのはかなり前でしたが、作品は格段に増えて充実しており、「縄文人アーチストがいっぱい」という強い印象をうけました。大英博物館で開かれた縄文土器展で見学者から「ピカソがいっぱい」という発言があったことは前に紹介したことがありましたが、それを真似て表現してみました。

 私は美術を人間科学として研究する専門分野があるのかどうかは知りませんが、縄文人アーチストたちは、岡本太郎ピカソ両氏よりも草間彌生さんや「障害者アーチスト」に近いと感じました。対象を抽象化するのはよく似ていますが、繰り返し表現に楽しさを見出している点は縄文アーチストと「障害者アーチスト」には見られますが、岡本太郎ピカソ両氏には見られないように思います。

 なお、この企画展のキュレーター・アートディレクターの中津川浩章氏は作品集の冒頭のあいさつで次のように述べています。

 

 実は「障害者アート」というカテゴリーは、美術史的には存在しません。「健常者アート」というカテゴリーがないのと同じことです。・・・こうしたカテゴリー分けに疑問を感じる人たちが段々と増えていくいくことで、将来「障害者アート」というカテゴリーが自然に消え、純粋に「アート」として認知されることを願っています。

 

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3.母系制共同体の中での「障害者アーチスト」

 「土器・土偶を製作していたのは女性」という説はよく見たように思います。おそらく、力仕事=男性、料理=出産=女性という役割分担から、食器・調理器づくり=女性、主産のお守りづくり=女性と判断したのではないかと思います。

 では、土器のうちの特別な装飾を施した「地母神信仰=霊(ひ:祖先霊)信仰」のための土器はどうなのでしょうか? 母系制社会において土器鍋で煮ることによって初めて美味しく食べることができるようになったイモやマメ、穀類を霊(ひ:祖先霊)に捧げ、安産を祈る祭祀は女性(御子=巫女)が担っていたと考えられ、神器土器鍋やお守りの土偶、巫女の女神像もまた女性が製作していた可能性が高いと考えます。

 

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 母系制共同体社会において障がい者は女性たちによって大事に育てられ、特別の役割が与えられて共同体祭祀を支えたのであり、祭祀縄文土器のデザインから見て障がい者が製作していた可能性が高いと私は考えます。

 男性中心の「武器・狩猟・戦争・侵略史観」では女性や子ども、障がい者の共同体の中での役割は見えてきませんが、母系氏社会史観の視点だと、祭祀縄文土器の製作は「障害者アーチスト」であったとはっきりと見えてくるのではないでしょうか?

 母系制共同体の中で障害者たちが安心して暮らし、楽しく土器製作に没頭している姿が目に浮かんでくるようです。

 

□参考□

<本>

 ・『スサノオ大国主の日国(ひなこく)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)

 ・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)

<雑誌掲載文>

 2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(『季刊 日本主義』40号)

 2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)

 2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(『季刊日本主義』44号)

 2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(『季刊 日本主義』45号)

<ブログ>

  ヒナフキンスサノオ大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina

  ヒナフキンの縄文ノート https://hinafkin.hatenablog.com/

  帆人の古代史メモ    http://blog.livedoor.jp/hohito/

  邪馬台国探偵団         http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

  霊(ひ)の国の古事記論 http://hinakoku.blog100.fc2.com/