縄文ノート159 縄文1万5千年から戦争のない世界へ
多くの尊い犠牲者を出しているウクライナ戦争の先にどのような未来が描けるのか、「戦争なき1万5千年の縄文社会」をもとに「戦争なき平和」な未来を想像してみました。
Imagine all the people 想像してごらん みんなが
Living life in peace 平和に生きていると
マルクスは「原始共産社会」を理想とし、一神教をマルクス主義に置き換えた男中心の私有財産の争奪戦(階級闘争・戦争)による共産社会を目指しましたが、「戦争による平和」な未来の実現など可能でしょうか?
私有財産だけに着目した「原始共産社会」像からではなく、縄文1万5千年の社会史から未来を想像(夢想・妄想?)してみたいと思います。
1 母系制社会へ
旧約聖書の神が約束した「男は殺し、女子どもは奴隷にする社会」ではなく、それより前の、子どもを生む女性中心の母系制縄文社会では男同士は殺し合いすることなく、女に気に入られるように恋を歌い、優秀な働き手であり、用心棒でした。なお、私は土器様式としての「縄文時代」ではなく、土器の機能に着目して「土器鍋時代」という糖質食革命の道具として「縄文時代」という言葉を使っています。
この縄文時代の次の時代として、新羅との米鉄交易を行う海人(天)族の男たちの船と財産を継承する父系制が生まれましたが、スサノオ・大国主一族は母系制の国津神族への交易と妻問夫招婚を維持した双系制社会の建国を行いました。鉄器時代の水利水田稲作への移行です。この体制は天皇家に引き継がれ、奈良・平安時代へと続きます。
土地争奪戦に移行した武士支配の鎌倉時代から父系制社会に移行しますが、男は海や戦場で働き、妻が家と子どもを守るという双系制社会の名残は、漁家や専業主婦のサラリーマン世帯にまで受け継がれてきました。
古代ギリシアのアテナイの喜劇作者・アリストファネスの『女の平和』が思い出されますが、「母系制社会」から、戦争のない未来を考えてみませんか?
2 霊(ひ)・霊継(ひつぎ)宗教社会へ
縄文人は死者の死体は母なる大地に帰り、霊(ひ=魂=玉し霊)は死体から離れて円錐形の神山から天に昇り、降りてきて子孫に受け継がれると考え、死者の霊(DNAの働きを霊継ぎと考えた)を霊神・鬼神として崇拝し、霊継(ひつぎ=DNAのリレー)を何よりも大事にし、霊(ひ)を断つことを禁じてきました。
霊(ひ)を受け継ぐ「人・彦・姫」は「霊人・霊子・霊女」であり、女性が妊娠すると「霊が留まらしゃった」として女性器を「霊」「霊那(霊が留まる場所)」と名付けて信仰し、石棒(金精:男性器)を女神が宿る山に捧げ、女神が降りてくるように環状集落や環状列石の中心に石棒を立て、家の中では囲炉裏に石棒を立てて死者の祖先霊と共食しています。
戦争による大量殺人を無くすためには、遊牧民族の「男は殺し、女子どもは奴隷にする征服戦争」を神の命令として奨励した一神教以前に世界中にあった女が祭祀を担った霊(ひ)信仰に帰る必要があるのではないでしょうか。
3 イモ・マメ・ソバ・魚介食へ
縄文人は「大豆・ソバ・魚」などに含まれる「トリプトファン」「ビタミンB6」を豊富にとり、しあわせホルモン「セロトニン」を増やし、「ノルアドレナリン(神経を興奮)」や「ドーパミン(快感を増幅)」の働きを制御して自律神経のバランスを整えるとともに、ドーパミンを増やして快楽・快適志向や探検・冒険意欲、家族愛や氏族・部族の共同力を高め、人類は世界に広がり、農耕、都市づくりなどを進めました。
さらに豊かな「イモ・マメ・ソバ・魚介食」のうち、土器鍋によるイモ・マメ・穀類の糖質は脳のエネルギー源(脳は摂取エネルギーの1/4を消費)となり、魚のオメガ3脂肪酸(DHA)や魚介のカルシウムは脳の神経細胞(ニューロン)の情報伝達機能を高め、母子のおしゃべりは3歳までの脳の高度な機能を確立し、縄文人の知性と生きる力を高めたのです。
アフリカの熱帯雨林での女こどもの果実とイモ・穀類の採集・栽培、足と銛による半身浴の魚貝採集による頭脳発達食と母子の会話こそがサルから人への知能と手足機能の進化を促したのであり、サバンナでの槍による男の狩猟・肉食が人類を進歩させたという西洋中心史観の妄想は捨てるべきです。
この肉食進歩史観は、先進国の肉食常食・飽食社会を招き、森林減少と草原・牧草地化、牛や羊などのゲップのメタンガスの温室効果、肥満や大腸がんなどの環境・健康問題を引き起こしており、食生活からの平和と健康を考えるべき時代となっています。
4 持続的発展可能な豊かな食社会へ
縄文土器鍋のおこげ、噴きこぼれとトカゲ龍の縁飾り、磨石(石臼)から、縄文人は「イモ食」を中心に堅果・マメ・穀類や魚介、肉を煮炊き蒸し料理にして安定した豊かな食生活を送り、イモ・ソバ・アワ・ヒエ・陸稲などの焼畑農耕・水辺農耕を行っており、大河の沖積平野での大規模水利による農耕とは異なる農耕文明を構築しました。大規模な単一農耕社会の集住・都市化ではなく、自然と調和した小規模分散型生産・交易社会と祖先霊祭祀の共同墓地を形成してきました。
漢字で「平和」が「平+禾(イネ科穀類)+口」で、「穀類が人々の口に平等にいきわたる」ことを示しているように、誰もが等しく豊かな食生活を送ることができることこそ平和の基本条件であり、食料・環境・紛争・戦争危機が心配されている現在こそ、自然の持続力・回復力に合わせた農耕・牧畜・漁業などの実現と居住形態が求められています。
豊かな森林は野生動物を育て、落ち葉などの栄養分は下流の農作物を豊作にし、プランクトンを増やして魚介類を育むのであり、休閑期間を置いて実施する焼畑農耕や水田農耕は循環的な農耕です。
森林を破壊した農地化と放牧は砂漠化を招き、農業土木・化学肥料・農薬・農業機械・ダム水・化石水・農業工場化などによる大規模工業型農業は食料生産を飛躍的に高めましたが森林破壊・環境破壊・化石水枯渇などを生み出すとともに、飽食と健康被害をもたらし、小規模農家を駆逐してきています。
全世界が自然収奪型農業・石油エネルギー依存型農業から持続的発展可能な農業に転換し、豊かで健康的な食生活社会に移行するために、縄文農耕からの自然循環型農耕の知恵が求められます。
□参考□
<本>
・『スサノオ・大国主の日国(ひなのくに)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)
・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)
<雑誌掲載文>
2012夏「古事記」が指し示すスサノオ・大国主建国王朝(『季刊 日本主義』18号)
2014夏「古事記・播磨国風土記が明かす『弥生史観』の虚構」(前同26号)
2015秋「北東北縄文遺跡群にみる地母神信仰と霊信仰」(前同31号)
2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(前同40号)
2017冬「スサノオ・大国主建国論1 記紀に書かれた建国者」(『季刊山陰』38号)
2018夏「スサノオ・大国主建国論2 「八百万の神々」の時代」(『季刊山陰』39号)
2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)
2018夏「スサノオ・大国主建国論3 航海王・スサノオ」(『季刊山陰』40号)
2018秋「『龍宮』神話が示す大和政権のルーツ」(『季刊 日本主義』43号)
2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(前同44号)
2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(前同45号)
<ブログ>
ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina
帆人の古代史メモ http://blog.livedoor.jp/hohito/
ヒナフキンの邪馬台国ノー http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/
霊(ひ)の国の古事記論 http://hinakoku.blog100.fc2.com/