ヒナフキンの縄文ノート

スサノオ・大国主建国論から遡り、縄文人の社会、産業・生活・文化・宗教などの解明を目指します。

190 サピエンス納豆からの「宗教・文化・文明アフリカ単一起源説」

 DNA分析の進化により、人類の「アフリカ単一起源説」が定説となり、「多地域進化説」は成立しなくなりました。

 私は同じように、人類の基本的な宗教・文化・文明などもまた西アフリカから人類大移動とともに世界に拡散したという「宗教・文化・文明アフリカ単一起源説」を考えてきました。そのきっかけは、次女が青年海外協力隊員として赴任していたニジェールニジェール川流域がヒョウタン原産地で米を栽培しており、若狭の鳥浜貝塚遺跡でヒョウタンと北アフリカ原産のウリ、インド原産のリョクトウ、南・東南アジアのシソ・エゴマが発見されていることを知ってからでした。

 そこから、Y染色体DNA、「主語-目的語-動詞(SOV)」言語、熱帯雨林での糖質・DHA食(イモマメ穀類・魚介食)と母子おしゃべり(言語発達)からのサルからヒトへの進化、マザーイネ(米・麦・トウモロコシ・雑穀の祖先)の発生地、米食、モチモチ・ネバネバ食(いももちなど)、魂魄分離(魂と肉体の分離)の神山天神信仰(ピラミッドを含む)、黒曜石文化、円形住宅やウッド・ストーンサークル、母系制社会などのルーツを探究し、アフリカから人類拡散とともに世界に広まったと考えるに至りました。

 なんと、さらに衝撃的であったのは納豆食文化もまた同じ西アフリカの可能性が高いことを高野秀行氏の『幻のアフリカ納豆を追え!―そして現れた「サピエンス納豆」』(2020年8月:新潮社)で教えられました。氏の 素晴らしい労作『謎のアジア納豆 そして帰ってきた〈日本納豆〉』(2016年4月)はたまたま与野図書館の食の企画展で目に入り1か月前に読んでいたのですが、さらにアフリカにまで取材を広げていたのです。

 「餅団子(研究者の人たちは『練り粥』と呼ぶ)を主食とする地域は納豆をソースの調味料として使うが、米食地域ではもっとバリエーションに富んでいる」「セネガルでは・・・『米+魚+納豆』という日本人にひじょうに馴染みのあるセットになっているのだ」「西アフリカでは粘り気のある野菜を多用する・・・オクラ・ハイビスカス(ローゼル)の葉、モロヘイヤなど、煮込めばみんなネバネバである」というのであり、「縄文ノート142 もち食のルーツは西アフリカ」を書き、モチモチ・ネバネバ食が大好きな私としては大いに納得しました。

 Y染色体D型人はこの地のE型人と分かれる前に、同じモチモチ・ネバネバ食文化を持っていた可能性が高いのです。

 

<『幻のアフリカ納豆を追え!―そして現れた「サピエンス納豆」』」より>

 

 

はてなブログ「ヒナフキンの縄文ノート」からの「宗教・文化・文明アフリカ単一起源説:参考図>

 人類西アフリカ熱帯起源説


3 言語西アフリカ起源説

 

4 糖質・DHA食西アフリカ熱帯雨林起源説

 

5 マザーイネ西アフリカ起源説

 

6 モチモチ・ネバネバ食西アフリカ起源説

 

<この段階では納豆は南・東南アジア山岳地帯起源説でした>

7 神山天神信仰東アフリカ湖水地方起源説

 

8 黒曜石文化東アフリカ起源説

 

9 円形平面住宅アフリカ起源説

 

10 母系制社会アフリカ起源説

 西アフリカなどからはヨーロッパや日本に見られるような石器時代の妊娠女性の像や女神像は見つかっていませんが、エジプト神話は「水の神」ヌンの誕生から始まり、メソポタミア神話の「海の女神」始祖神ナンムや「天の女主人」のイナンナは母系制社会の女神信仰を示しています。

 また、私は「製鉄アフリカ起源説」ですが、時代は下がりますがアフリカでは技術者の最上位カーストは鉄鍛冶師で、陶工・土器製作者であり、粘土でカマドをつくっていた女性が土器・製鉄を開始したという説を支持しています。なお、日本の製鉄神・金屋子神も女神です。

 

 

 

□参考□

<本>

 ・『スサノオ大国主の日国(ひなのくに)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)

 ・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)

 ・『奥の奥読み奥の細道』(アマゾンキンドル本)

<雑誌掲載文>

 2012夏「古事記」が指し示すスサノオ大国主建国王朝(『季刊 日本主義』18号)

 2014夏「古事記播磨国風土記が明かす『弥生史観』の虚構」(前同26号)

 2015秋「北東北縄文遺跡群にみる地母神信仰と霊信仰」(前同31号)

 2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(前同40号)

 2017冬「スサノオ大国主建国論1 記紀に書かれた建国者」(『季刊山陰』38号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論2 「八百万の神々」の時代」(『季刊山陰』39号)

 2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論3 航海王・スサノオ」(『季刊山陰』40号)

 2018秋「『龍宮』神話が示す大和政権のルーツ」(『季刊 日本主義』43号)

 2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(前同44号)

 2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(前同45号)

<ブログ>

 ヒナフキンスサノオ大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina

 帆人の古代史メモ          http://blog.livedoor.jp/hohito/

 ヒナフキン邪馬台国ノート      http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

 霊(ひ)の国の古事記論       http://hinakoku.blog100.fc2.com/

「スサノオ・大国主ノート151 鉄刀・鉄剣からみた建国史―アフリカ・インド鉄と新羅鉄・阿曽鉄、草薙大刀・草薙剣・蛇行剣」の紹介

 Gooブログ「ヒナフキンスサノオ大国主ノート」に「スサノオ大国主ノート151 鉄刀・鉄剣からみた建国史―アフリカ・インド鉄と新羅鉄・阿曽鉄、草薙大刀・草薙剣・蛇行剣」をアップしました。https://blog.goo.ne.jp/konanhina

 先日、スサノオ・イナダヒメらを祀る須我神社のある島根県雲南市大東町出身の起業家・細貝和則氏と歓談する機会があり、TBS「ワールドビジネスサテライト」のトレたまトレンドたまご)の年間大賞を受賞したライティングシート(画鋲やテープを使用せず静電気で貼りつける持ち運び容易なホワイトボード代わりのシート)などの発明・事業展開・Uターン起業化の話を聞きました。私からは「トレたま」で放送されたものの売れなかった世界初の折り畳み式の小型ヨット・ランブラーの事業化の失敗談や、八百万神信仰のスサノオ大国主建国、出雲大社復元案、たたら製鉄などを話し、盛り上がりました。。

 氏の出身地の大東町がかつては日本のモリブデンの主産地であったという重要な話を聞きましたのでモリブデン鋼製鉄の可能性、ヤマタノオロチの草薙大刀(くさなぎのおおたち)と天皇家の「三種の神器」の草薙剣(くさなぎのつるぎ)の関係、オロチ王を切ったスサノオの十拳剣(とつかのつるぎ)と石上神宮の約120㎝の大刀・約85㎝の剣の関係、アフリカの製鉄女神とたたら製鉄の女神・金屋子神の関係、吉備の温羅の妻・阿曽姫ゆかりの阿曽地区製鉄と阿蘇リモナイト鉄の関係、八岐大蛇と蛇行剣、インド・東南アジアの7つ頭のナーガ蛇神・八大竜王の関係などについて考えてみました。

 本ブログの「縄文論」としても、アフリカの製鉄女神とたたら製鉄の女神・金屋子神が示す母系制社会の解明の参考にしていただければと思います。雛元昌弘

 

□参考□

<本>

 ・『スサノオ大国主の日国(ひなのくに)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)

 ・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)

<雑誌掲載文>

 2012夏「古事記」が指し示すスサノオ大国主建国王朝(『季刊 日本主義』18号)

 2014夏「古事記播磨国風土記が明かす『弥生史観』の虚構」(前同26号)

 2015秋「北東北縄文遺跡群にみる地母神信仰と霊信仰」(前同31号)

 2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(前同40号)

 2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(前同42号)

 2018秋「『龍宮』神話が示す大和政権のルーツ」(前同43号)

 2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(前同44号)

 2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(前同45号)

<ブログ>

  ヒナフキンスサノオ大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina

  帆人の古代史メモ          http://blog.livedoor.jp/hohito/

  ヒナフキン邪馬台国ノー      http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

  霊(ひ)の国の古事記論       http://hinakoku.blog100.fc2.com/

  ヒナフキンの縄文ノート       https://hinafkin.hatenablog.com/

 

189 ハラリ氏の新たな嘘話『サピエンス全史』を批判する(加筆・修正版)

「188 ハラリ氏の嘘話『サピエンス全史』批判」は口頭での報告用なので、以下、読者向けに加筆・修正しました。

 

 アメリカに敗戦するまで他民族に征服・支配されることのなかったわが国は、新旧石器時代(日本では旧石器・縄文時代)の文化・文明が現代まで色濃く継承されており、しかも世界に類のない緻密な縄文時代研究と博物館、復元施設、市民体験活動などがあり、一神教以前の全世界の歴史解明を先導する役割を担うべきと考えます。

 ユダヤ・キリスト・イスラム教などの終末思想・優生思想・選民思想に基づく一神教をハラリ氏は「嘘話」とした点を私は高く評価し、宗教戦争をなくすことに繋がることを期待したのでしたが、読んでみると科学的な言葉を散りばめただけの古くさい「嘘話」の焼き直しにすぎず、ガッカリでした。

 ユダヤ教の征服・殺戮・奴隷化を奨励する神の代わりに、「人類は誕生した時から殺戮・征服者として進化してきた」という嘘話を追認し、旧約聖書を信奉するユダヤシオニストエルサレム帰還・再征服派)やキリスト教徒・イスラム教徒に現代的な焼き直しの思想を吹き込もうとするものでした。

 今、この侵略的な西洋・男性中心の「肉食・狩猟・闘争・戦争進歩史観」を批判し、覆すハト派進化説「糖質魚介食・採集漁労農耕・共同共生共進進化説」が次々と解明されてきていますが、ハラリ氏はそれらを全て無視するタカ派進化説の守旧派でしかありませんでした。そして、その先には終末の未来しかないことをウクライナパレスチナ戦争や地球環境悪化による異常気象・食料危機などは示しています。

 今こそアフリカで誕生しアフリカ・アジア・南北アメリカで共進した数万年の人類史を辿り、たかだか2千数百年の西欧中心文明の先を展望してみませんか?

 

1 伝説・宗教・イデオロギー・貨幣信仰の「嘘話」を否定した新たな「人類史嘘話」

 ユヴァル・ノア・ハラリ氏は『サピエンス全史』において、伝説やユダヤ教キリスト教イスラム教、イデオロギー社会主義、人間至上主義)、貨幣信用などを「嘘話(虚構)」と批判し、このような嘘話(フェイク)を信じる人たちに大きな影響を与えた点は高く評価したいと思います。

 しかしながらハラリ氏は、ユダヤ人が「唯一絶対神」を発明し、カナン(現在のイスラエル)を神が与えた「約束の地」として侵略・殺戮・略奪・支配し、金融資本主義を先導したユダヤ人の「原罪」を隠した「ユダヤ教・金融資本主義」の嘘話を歴史家として具体的に批判すべきであったにも関わらず、それを避けています。

 ユダヤ人への差別・迫害・ホロコーストをバネとし、それを何よりも生命を大事にする共同・共生・共進の平和な世界の創造に向けるのではなく、ユダヤ教シオニストパレスチナ(カナン)の再征服を正当化する新たな嘘話を創作しようとしているのではないかと疑われるのがハラリ氏の嘘話・サピエンス全史です。

 「唯一絶対思想」を考えたマルクスもこの「唯一絶対神」思想の延長にあり、どちらも同じように「宗教・思想による人類の統一」(グローバリズムインターナショナリズム)を目指しており、ハラリ氏もまたその一人なのです。

 彼の人類起源論・人類拡散論のまとめは、古くさい西洋・男性中心の「肉食・狩猟・闘争・戦争進化史観」の要約にすぎず、最近の研究成果を踏まえておらず、期待を裏切られてがっかりでした。カナン(フェニキア)・シュメール文明、ブリトン人のストーンサークル文明、エジプト・インダス・中国(春秋・戦国時代以前)4大文明、1万数千年の縄文人の歴史などを無視した、旧約聖書教の西洋中心史観の要約にすぎません。

 その結果、現在の「戦争・侵略なき世界」「グローバリズムの格差なき文明社会」「地球環境問題」「貨幣嘘話=拝金主義なき世界」への展望を示すことはできず、「幸福度」「人生の意義」などというボンヤリとした「超ホモ・サピエンス」時代を提案しているにすぎません。この程度の「嘘話」にコロリと騙され同調するジャレド・ダイアモンドバラク・オバマビル・ゲイツなど著名人も多いのですから、「フェイク派」に対する「真実派」の戦いは容易ではありません。

 この本は宗教・貨幣・思想の「嘘話」から覚めるために多くの人に読んで欲しいと思いますが、そこから肉食・狩猟・闘争・戦争進化論の西洋中心史観やユダヤ・キリスト・イスラム一神教奴隷制ローマ帝国や欧米アフリカ人奴隷貿易などを冷徹に批判し、縄文文明などアフリカ・アジア・南北アメリカを中心に置いた世界史の解明に進み、未来社会を展望する若い人たちが出てきて欲しいものです。

 なお、私はグロ-バリズムの「世界単一市場化の世界支配と不均等発展」には組せず、全ての民族・地域の自立・経済的発展と尊厳を願う汎民族・汎地域主義者であり、西欧キリスト教社会のユダヤ人差別・迫害・大量殺戮を強く憎むものであり、私の批判は唯一絶対思想の旧約聖書教とマルクス主義亜流、ユダヤ教シオニストパレスチナ支配・迫害・殺戮に限って向けられているものであり、反ユダヤ主義者ではないことを改めて強調しておきたいと考えます。

 

2 「タカ派進化史観」対「ハト派進化史観」

 歴史の専門家ではない私の知識は、雑誌『ナショナルジオグラフィック』『日経サイエンス』と公刊された単行本くらいですが、遊牧民ユダヤ人の旧約聖書をベースとしたタカ派の「肉食・狩猟・闘争・戦争文明史観」に対し、霊長類・類人猿学、文化人類学、食物学、考古学、遺伝子分析などからのハト派の「糖質魚介食・採集漁労・共同共生共進文明史観」が今や主流となりつつあるにも関わらず、ハラリ人類史はそれらをことごとく無視しています。

 「物語作家」ならともかく、歴史学者というハラリ氏の肩書には疑問を覚えます。

 

3 「二足歩行進化説」対「頭脳先行進化説」

 「狩猟・遊牧民族史観」のハラリ氏は、熱帯雨林からサバンナに出て大型草食動物を狩猟し、肉食と言葉、頭脳を発達させたという古くさい進化説、「脳筋」説のままであり、「脳の進化」は不明としています。

 人は乳幼児期にまずは脳や言葉が発達し、次に二足歩行ができるようになることを見ても、サルからヒトへの人類進化は頭脳の発達が先行したのです。それを可能にしたのは糖質とDHA(精液や脳、網膜のリン脂質に含まれる脂肪酸の主要な成分)であり、熱帯雨林における「イモマメ穀類・魚介食」こそがホモサピエンス(賢い人)を誕生させたのです。

 ハラリ氏はこれらの研究を無視して「脳の進化不明」としており、歴史学者などというのはおこがましく「作家」というべきでしょう。

 

 

4 「サバンナ人類誕生説」の嘘話

 ユダヤ人のルーツである狩猟・遊牧民を歴史の中心に据えたいハラリ氏は、サバンナは「原初の豊かな社会」、「狩猟採集民の豊かな暮らし」説を披露していますが、「熱帯雨林、亜熱帯・温帯林」や「採集漁労民」などとの比較は行っていません。生物学や文化人類学の成果など無視です。

 私の反論は次のとおりです。

① ホモ・サピエンスと分かれたゴリラ・チンパンジーボノボの生息域はアフリカ西海岸のニジェールコンゴ川流域の熱帯雨林である。

② 糖質(脳の活動エネルギー)・DHA(シナプス形成)食が頭脳の発達を支え、それを可能としたのは海岸・河川や沼のある熱帯雨林である。

③ 半身浴採集(魚介類・両生類・爬虫類)が二足歩行と手機能の向上をもたらすとともに、DHA食による知能(知脳)の発達を支えた。

④ カメルーン山やルウェンゾリ山などの火山噴火や熱帯雨林の雷による火災が女性によるイモ・マメ穀類の加熱調理を促して糖質の安定摂取を可能にし、脳の活動を支えるとともに、自由時間の増大がメス・子どものおしゃべりによる乳児期の知能を発達させ、共同子育て・共同採集漁撈活動と遊びが幼児の知能を飛躍的に高めた。

⑤ メス・子どもの共同採集・漁労・調理活動のための穴掘り棒(イモ類・イモムシ)・銛・ヤス・調理具の製作が手機能と脳の発達を促し、食料調達を容易にした。

⑥ 日本人の4割を占めるY染色体D型人はアフリカ西海岸でY染色体E型人と分かれ、ナイジェリアには3人のY染色体D型人が発見されており、チンパンジーボノボの生息するこの地こそがホモ・サピエンスの故郷である。

⑦ 縄文遺跡から見つかるヒョウタンのルーツはアフリカ西海岸のニジェール川流域であり、全てのイネ科穀類(米・麦・トウモロコシ・アワ・ヒエなど)のルーツはパンゲアゴンドワナ)大陸の現西アフリカと南アメリカ東部のあたりであった可能性が高い。

⑧ 「主語-目的語―動詞(SOV)族」の分布はイモ類や魚介類の豊富な熱帯の「海の道」に沿った早期の人類拡散を示している。

⑨ 東アフリカからは人骨や骨器などが発見されているが、高温多湿で酸性土の熱帯雨林では人骨・骨器・木器などは残らない。

⑩ サルからヒトへの進化の論点、11の進化要因の従来説と筆者説、進化のプッシュ要因説とプル要因説についてこれまでまとめたものを表4~6に示す。

 

5 「狩猟採集民史観」の嘘話

 狩猟・遊牧民をルーツとするユダヤ人の歴史家として、ハラリ氏の人類史は「狩猟採集民の豊かな暮らし」などユダヤ人のための狩猟・遊牧民人類史とでもいうべき偏った世界史になっています。

 エンゲルス私有財産制を基準に「野蛮→未開→文明」「原始共同体→奴隷制封建制→資本主義」という時代区分を提案し、中国の清朝末から中華民国にかけて活躍した学者・革命家・政治家・ジャーナリストの梁啓超は「河流文明時代→内海文明時代(ギリシア・ローマ時代)→大洋文明時代」という時代区分から「四大文明論」を唱え、英国の歴史学者アーノルド・J・トインビーは西欧中心史観を批判して地域性・文化性・宗教性を分析に加え「西ヨーロッパ文明、東ヨーロッパ文明(ビザンチン文化→帝政ロシア)、アラブ文明、ヒンズー文明、中国文明儒教)、日本文明(大乗仏教)」の6文明論を主張しています。

 さらに、梅棹忠夫(京大名誉教授)は生態学から文明論へと進み、西洋・東洋という区分を批判し、西ヨーロッパ・日本を第一地域、その間の大陸部分を第二地域とした分類を提案し、川勝平太氏(比較経済史、元早大教授、静岡県知事)は今西錦司生態学・霊長学、京大名誉教授)の「棲み分け理論」の影響のもとに「陸地史観」(農業社会→工業社会)を批判して交易の役割を重視した「海洋史観」を提案しています。

 歴史学素人の私ですらこの程度の表面的な知識はあるのですから、ハラリ氏は歴史学者として「サピエンス全史」というならこれらの説を統合した提案をすべきですが、「狩猟遊牧民全史」に終わっています。

 また思想家というなら、現在、大きな転換点を迎えようとしている西洋文明の様々な問題を人類史に遡って検討すべきでしょう。

 

6 「世界征服史観」の嘘話

 ハラリ氏はアフリカからの人類拡散をなんと「ホモ・サピエンスによる世界征服」地図としており、ここに彼の基本思想が示されています。「ホモ・サピエンスは他の原人・旧人を滅ぼした征服者である」としたいのです。

 しかしながら、現生人類(ホモ・サピエンス)にネアンデルタール人の遺伝子が受け継がれていることを発見したスバンテ・ペーボ独マックス・プランク進化人類学研究所教授(沖縄科学技術大学院大客員教授)が2022年にノーベル賞を受賞したことからも明らかなように、ホモ・サピエンスネアンデルタール人は共生していた時期があったことが証明されており、ホモ・サピエンスネアンデルタール人を殺戮・絶滅させたという考古学的な証拠がなかったことを遺伝子分析で裏付けました。ハラリ氏はこれらの研究を知らなかったとでも言うのでしょうか。

 ハラリ氏は「ホモ・サピエンスが猿人や原人、旧人を征服して絶滅させた」とし、ユダヤ旧約聖書教の「征服・殺戮・強盗神」に置き換えたいようですが、子どもでもわかる事実としてホモ・サピエンスは全てのサルを絶滅などさせておらず、また、世界各地で多様な民族が共生しているのです。
 猿人や原人、旧人の絶滅については、ホモ・サピエンスが「滅ぼした」「競争に勝った」という説以外に「感染症の影響」説があることをハラリ氏は知っていたはずです。

 実際、新型コロナ感染は民族によって免疫力に違いがあることを明らかにしました。それまでにコロナ風邪にかかって免疫力を高めていた日本人は新型コロナウィルスへの感染率が低かったのです。

 アフリカを最後に出たホモ・サピエンスはアフリカで様々な感染症への免疫力を高めていた「ホモ・イミューン(免疫力の高い人間)」であり、先に世界各地に拡散していた原人や旧人が新興感染症にやられても生き残ったのです。

 

7 ハラリ氏の「嘘話人類進化説」に未来はあるか?

 私ははてなブログ:NoWar2022の「26 ロシア兵の残虐性は『旧約聖書』ゆずり?」で、旧約聖書を紹介しました。

 

申命記(神命記):

「あなたがその町に近づいたときには、まず降伏を勧めなさい。降伏に同意して門を開くなら、その中にいる民は、みな、あなたのために、苦役に服して働かなければならない。 もし、あなたに降伏せず、戦おうとするなら・・その町の男をみな、剣の刃で打ちなさい。しかし女、子ども、家畜、また町の中にあるすべてのもの、そのすべての略奪物を、戦利品として取ってよい」「あなたの神、主が相続地として与えようとしておられる次の国々の民の町では、息のある者をひとりも生かしておいてはならない。すなわち、ヘテ人、エモリ人、カナン人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人は、あなたの神、主が命じられたとおり、必ず聖絶しなければならない。それは、彼らが、その神々に行なっていたすべての忌みきらうべきことをするようにあなたがたに教え、あなたがたが、あなたがたの神、主に対して罪を犯すことのないためである」と神が命じたと伝えているのです。

ヨシュア記:

「あなたがたが、足の裏で踏む所はみな、わたしがモーセに約束したように、あなたがたに与えるであろう。・・・そして町にあるものは、男も、女も、若い者も、老いた者も、また牛、羊、ろばをも、ことごとくつるぎにかけて滅ぼした。そして火で町とその中のすべてのものを焼いた。ただ、銀と金、青銅と鉄の器は、主の家の倉に納めた」

 

ハラリ氏は歴史家というならこの神の嘘話から説き起こし、侵略・殺戮・強盗神を批判するところから始めるべきでしょう。

さらに「27 ユダヤ教聖典の『旧約聖書』と『タルムード』の残虐性」においては、ユダヤ教聖典『タルムード』を取り上げました。

 

「人間の獣に優れる如く、ユダヤ人は他の諸民族に優れるものなり」「汝らは人類であるが、世界の他の国民は人類にあらずして獣類である・・・世界はただイスラエル人の為にのみ創造されたるなり」「すべての民を喰い尽くし、すべての民より掠奪することは、彼らすべてが吾等の権力下に置かれる時に始まるべし」「涜神者(非ユダヤ人)の血を流す者は、神に生贄を捧ぐるに等しきなり・・・汝殺すなかれ、との掟は、イスラエル人を殺すなかれ、との意なり」「他民族の有する所有物はすべてユダヤ民族に属すべきものである。ゆえになんらの遠慮なくこれをユダヤ民族の手に収むること差し支えなし」「ゴイ(非ユダヤ人)の財産は主なき物品のごとし」

 

 歴史家ハラリ氏はこのようなユダヤ教の神の言葉を嘘話というのなら、その嘘話を現在のシオニストたちが今も信じてパレスチナ侵略・殺戮・略奪を行っていることを問題にすべきではないでしょうか?

 ハラリ氏がやったことは、旧約聖書の侵略・殺戮・強盗神を嘘話とする代わりに、ホモ・サピエンスは元々殺し屋であり、肉食・狩猟・闘争・戦争によって進化してきたとしてシオニストたちのジェノサイドを擁護したいようですが、そのような証明は成功していません。

 ユダヤ人の「優生・選民宗教」を転用し、ヒットラーは「アーリア人優生・選民思想」という嘘話でドイツ国民を統合しユダヤ人を大量虐殺し、「大衆は、小さな嘘よりも大きな嘘の犠牲になりやすいだろう」と大きな嘘話で国民を世界征服戦争に駆り立て、今、プーチンは「聖なるロシア帝国」「神が護りし祖国」のためのウクライナ戦争に国民を動員し、シオニスト・ネタニヤフは「神がくれた土地」としてパレスチナ人を殺戮して全土支配を目指しています。ハラリ氏は歴史家としてこのような嘘話にどう対抗し、どのような未来を創ろうというのでしょうか?

 たかだか2千数百年の旧約聖書の「侵略・殺戮・強盗奨励神」の嘘話と向き合うためには、ハラリ氏は数万年の母系制社会の「共同・共生・共進進化」の真実のホモ・サピエンス全史の研究をすべきでした。

 ハラリ氏の「狩猟採集民」選民思想の歴史からではなく、「糖質・DHA食」の人類誕生の歴史を受け継いだ、自然を活かし、女性が敬われ女神が信仰された母系制社会の豊かで平和な1万数千年の縄文人の歴史から、私たちは次の文明を展望すべきです。

芸術家・岡本太郎氏の「縄文に帰れ」を今こそ世界へ向けて発信したいと思います。

□参考□

<本>

 ・『スサノオ大国主の日国(ひなのくに)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)

 ・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)

 ・『奥の奥読み奥の細道』(アマゾンキンドル本)

<雑誌掲載文>

 2012夏「古事記」が指し示すスサノオ大国主建国王朝(『季刊 日本主義』18号)

 2014夏「古事記播磨国風土記が明かす『弥生史観』の虚構」(前同26号)

 2015秋「北東北縄文遺跡群にみる地母神信仰と霊信仰」(前同31号)

 2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(前同40号)

 2017冬「スサノオ大国主建国論1 記紀に書かれた建国者」(『季刊山陰』38号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論2 「八百万の神々」の時代」(『季刊山陰』39号)

 2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論3 航海王・スサノオ」(『季刊山陰』40号)

 2018秋「『龍宮』神話が示す大和政権のルーツ」(『季刊 日本主義』43号)

 2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(前同44号)

 2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(前同45号)

<ブログ>

 ヒナフキンスサノオ大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina

 帆人の古代史メモ          http://blog.livedoor.jp/hohito/

 ヒナフキン邪馬台国ノート      http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

 霊(ひ)の国の古事記論       http://hinakoku.blog100.fc2.com/

188 ハラリ氏の嘘話『サピエンス全史』批判

 3月13日、縄文社会研究会・東京の顧問・尾島俊雄早大名誉教授の研究室でユヴァル・ノア・ハラリ氏の『サピエンス全史』などの翻訳者柴田裕之氏を招いての学習会があり、私は縄文ノート130~139の「『サピエンス全史』批判」1~5(220331~0523)の要点をまとめたレジュメと、182「人類進化を支えた食べもの」、186「『海人族縄文文明』の世界遺産登録へ」(231204)を報告しました。

 他民族に征服されることのなかったわが国は、新旧石器時代(日本では旧石器・縄文時代)の文化・文明が現代まで継承されており、しかも世界に類のない緻密な縄文時代研究と博物館・復元施設、市民体験活動などがあり、一神教以前の全世界の石器時代の歴史解明を先導するべき役割を担うべきと考えます。

 ユダヤ・キリスト・イスラム教などの終末思想・優生思想に基づく一神教をハラリ氏は「嘘話」とした点は高く評価しますが、ユダヤ教の征服・殺戮・奴隷化を奨励する神の代わりに、「人類は誕生した時から征服者であり殺戮者として進化してきた」という新たな嘘話を創作し、ユダヤシオニストの思想を世界に広めようとしています。

 今、この侵略的な白人・男性中心の「肉食・狩猟・闘争・戦争進歩史観」を批判するハト派進化説が次々と生まれてきていますが、ハラリ氏はそれらを無視し、タカ派進化説の旗手としてあがめられてきていますが、その先には終末の未来しかないことをウクライナパレスチナ戦争や地球環境悪化による異常気象・食料危機などは示しています。

 今こそアフリカで誕生しアフリカ・アジア・南北アメリカで進化した数万年の人類史を辿り、たかだか2千数百年の西欧中心文明の先を展望してみませんか?

 以下のレジュメ(要約)は説明のためのものなので、読んだだけでは理解しにくいと思いますので、元の縄文ノート130~139を見ていただければ幸いです。

 

1 まえがき:ヒナフキンの縄文ノート130(2022年3月31日)

 ユヴァル・ノア・ハラリ氏の『サピエンス全史』をざっと読みました。

 伝説やユダヤ教キリスト教イスラム教、イデオロギー社会主義、人間至上主義)、貨幣信用などを「嘘話(虚構)」と批判し、「嘘話」で形成された集団によって人類が進歩したと勇気ある分析を行い、嘘話を信じる人たちに大きな影響を与えた点は高く評価したいと思います。・・・

 しかし、ハラリ氏は「唯一絶対神」を発明し、カナン(現在のイスラエル)を神が与えた「約束の地」として侵略・殺戮・征服・支配を行い、金融資本主義を先導したユダヤ人の「原罪」を隠した「嘘話ユダヤ教・金融資本主義」から説明すべきであったにも関わらず、それを避けています。ユダヤ人差別の中にあるハラリ氏には思想家としての限界を感じました。

 「唯一絶対思想」を考えたマルクスもこの「唯一絶対神」思想の延長にあり、どちらも同じように「宗教・思想の嘘話の統一による人類の統一」(グローバリズム)を目指しており、その延長上にハラリ氏もまたいるのではないか、という印象を受けました。

 また、彼の人類起源論・人類拡散論のまとめは、古くさい白人中心史観の男性中心史観、肉食・狩猟・闘争・戦争進化史観の定説の要約にすぎず、最近の研究成果を踏まえておらず、期待を裏切られてがっかりでした。カナン(フェニキア)人やシュメール人ストーンヘンジなどをつくったブリトン人、4大文明のエジプト・インダス・中国文明、土器鍋を囲んだ1万数千年の縄文人の歴史など、ユダヤ人・ローマ人の歴史以前の世界史を無視した西洋中心史観です。

 その結果、現在の課題である「戦争・侵略なき世界」「グローバリズムの格差なき文明社会」「地球環境問題」「貨幣嘘話=拝金主義なき世界」への展望を示すことはできず、「幸福度」「人生の意義」などというボンヤリとした「超ホモ・サピエンス」時代を提案しているのは「竜頭蛇尾」もいいところと思います。

 この本は宗教・貨幣・思想の「嘘話」から覚めるために多くの人に読んで欲しいと思いますが、そこから肉食・狩猟・戦争進化論の西欧中心史観やユダヤ・キリスト・イスラム一神教奴隷制ローマ帝国近代科学社会後の奴隷制アメリカ帝国などを冷徹に批判し、縄文文明などアフリカ・アジア・南北アメリカを中心に置いた世界史の解明に進み、未来社会を展望する若い人たちが出てきて欲しいものです。

 『サピエンス全史』を読んで思い出されるは、古くさい話で恐縮ですが1960・70年代の「主意主義(われ思うわれあり)対唯物史観(存在が意識を規定する)」、「実存主義(実存は本質に先立つ)」「主体性論(自らの意志による行動)」「武谷弁証法(客観的法則の意識的適応)」などの議論です。

 青くさいと思われるかも知れませんがその議論を思い出していただくと、「吉本共同幻想論」や「ハラリ嘘話論」は「人間の存在・実存・主体性・意識性を欠いた受動性(嘘話付和雷同性)批判」にしかすぎず、1970年代からの運動の中で作り上げてきた新しい「共同性・協働性・公正性」や「多様性」「平等性」「生類愛」「共生」などの豊かな思想と実践の反映は見られません。ハラリ氏は帝国主義イスラエルに暮らしてきておりやむをえないと思いますが、1970年以前の古くさい思想のままです。この間のウクライナ戦争に対するロシア支持の「化石左翼」メンバーの化石度と同じように感じずにはおれません。

 なお、私はグロ-バリズムの「世界単一市場化の世界支配と不均等発展」には組せず、全ての民族・地域の自立・経済的発展と尊厳を願う汎民族・汎地域主義者であり、西欧キリスト教社会のユダヤ人差別・迫害・大量殺戮を強く憎むものであり、私の批判は唯一絶対思想のユダヤ教マルクス主義亜流、イスラエルシオニストパレスチナ支配・迫害・殺戮に限って向けられているものであり、反ユダヤ主義者ではないことを改めて強調しておきたいと考えます。

 

2 狩猟・遊牧民族史観:ヒナフキンの縄文ノート133(2022年4月10日)

⑴ 「狩猟民族に学ぶべき」???

⑵ 「ホモ・イミューン(免疫力の高い人間)」の生き残り

⑶ 「脳の進化不明説」のインチキ

3 世界征服史観:ヒナフキンの縄文ノート134(2022年4月14日)

⑴ あっと驚くハラリ氏の「世界征服地図」

⑵ 「サバンナ人類誕生説」の嘘話

① ホモ・サピエンスと分かれたゴリラ・チンパンジーボノボの生息域はアフリカ西海岸のニジェールコンゴ川流域の熱帯雨林である。

② メス子どものおしゃべりと共同子育て・共同採集漁撈が乳幼児期の知能を発達させ、教育が子どもの生存率を高めた。

③ 糖質(脳の活動エネルギー)・DHA(シナプス形成)食が頭脳の発達を支えた。

④ 水中歩行採集(魚介類・両生類・爬虫類)が二足歩行と手機能の向上をもたらした。

⑤ メス・子どもの採集のための穴掘り棒(イモ類・イモムシ)・銛・調理具の製作が手機能と脳の発達を促し、食料調達を容易にした。

⑥ カメルーン山やルウェンゾリ山などの火山噴火や熱帯雨林の雷による火の調理使用を促した。

⑦ Y染色体D型族はアフリカ西海岸でY染色体E型族と分かれた。

⑧ ヒョウタンとマザーイネのルーツはアフリカ

 

⑶ 「ウォークマン史観」の嘘話

⑷ 「4河川文明無視」の嘘話

⑸ 「西欧人アララト山ルーツ説」の嘘話

⑹ 「東洋人乾燥地帯ルーツ説」の嘘話

 

4 嘘話(フェイク)の人類進化説:ヒナフキンの縄文ノート137(2022年5月6日)

⑴ 5W1Hがない「ハラリ認知革命説」

⑵ 嘘話が先か、共同利益が先か?

⑶ 擬人化を神格化と勘違いさせるハラリ氏の嘘話

 ―ライオン像より妊婦女性像・女神像こそ注目すべき

⑷ ハラリ氏の「認知革命」の怪しい定義

⑸ ハラリ氏に必要なのは歴史からの具体的な教訓

 

5 狩猟採集民の「平和と戦争」:ヒナフキンの縄文ノート139(2022年5月23日)

⑴ 「狩猟採集民の豊かな暮らし」?

⑵ 「肉食史観」対「糖質・魚介食史観」

⑶ 現代人の肥満のルーツは狩猟採集民?

⑷ 「古代コンミューン派」対「永遠の一夫一妻制派」??

⑸ 遺伝子学無視の人類と犬だけの優性思想

⑹ サバンナは「原初の豊かな社会」?

⑺ アニミズム否定による嘘話進化説

⑻ 「平和か戦争か?」は「沈黙の帳」???

 

□参考□

<本>

 ・『スサノオ大国主の日国(ひなのくに)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)

 ・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)

 ・『奥の奥読み奥の細道』(アマゾンキンドル本)

<雑誌掲載文>

 2012夏「古事記」が指し示すスサノオ大国主建国王朝(『季刊 日本主義』18号)

 2014夏「古事記播磨国風土記が明かす『弥生史観』の虚構」(前同26号)

 2015秋「北東北縄文遺跡群にみる地母神信仰と霊信仰」(前同31号)

 2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(前同40号)

 2017冬「スサノオ大国主建国論1 記紀に書かれた建国者」(『季刊山陰』38号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論2 「八百万の神々」の時代」(『季刊山陰』39号)

 2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論3 航海王・スサノオ」(『季刊山陰』40号)

 2018秋「『龍宮』神話が示す大和政権のルーツ」(『季刊 日本主義』43号)

 2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(前同44号)

 2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(前同45号)

<ブログ>

 ヒナフキンスサノオ大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina

 帆人の古代史メモ          http://blog.livedoor.jp/hohito/

 ヒナフキン邪馬台国ノート      http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

 霊(ひ)の国の古事記論       http://hinakoku.blog100.fc2.com/

187 「まさひろドーイ」からの焼畑・縄文語・天皇家考 

 今回は気分転換の息抜きに、イオンモールで瓶踊りの「まさひろドーイ」の載った面白い泡盛を見つけたので紹介し、焼畑農耕と琉球弁・本土弁、天皇家のルーツについて付言します。

 私の名前は「昌弘」なので、沖縄に行った時には比嘉酒造(現まさひろ酒造:3代目の名前から)の写真の大きな壺入りの古酒「まさひろ」(2000年仕込み)を買い、子どもたちも土産には「まさひろ」を買ってきてくれていましたが、他にも名前に引かれて「海人(うみんちゅ)」や「島唄(しまうた)」もよく買っています。

 まさか埼玉で「まさひろ」に出会えるとは思わなかったのですが、沖縄紹介の旅番組などで気になっていた瓶踊りのイラストが気に入り直ちに購入しました。

 「うまさひろがる」に「まさひろ」があるのがいいし、瓶踊りイラストが面白いのでネットで検索してみると「まさひろドーイ」の歌と踊りを見つけました。

無芸なので、瓶踊りに挑戦してみたいところですが、踊は苦手なのでちょっと自信がありませんが・・・

https://www.youtube.com/watch?v=kYhgVSX4wYk

https://www.youtube.com/watch?v=fdbyWpLlFMU

 

 なお、歌詞の「海人(うみんちゅ)ん 畑人(はるんちゅ)ん 踊(うどう)てぃ飲(ぬ)でぃ遊(あし)ば」は、縄文海人族(あまぞく)・縄文山人(やまと)族による日本列島人起源論や海人族のスサノオ大国主建国論をやっている私には見逃せません。

 

 「畑人」と書いて「はるんちゅ」と読むのでびっくりしましたが、壱岐原の辻遺跡(はるのつじいせき)や福岡県糸島市の平原遺跡(ひらばるいせき)など、九州では「原」を「はる、ばる」と読む地名が多いことからみて、「はる(原)」=「畑(火+田)」=焼畑であり、沖縄と九州が焼畑の同一文化圏であった可能性がでてきました。

 なお、ウィクショナリーで調べてみると、「畑」「畠」は和製漢字であり、「畑(火+田)=焼畑」と「畠(白+田)=乾田(二毛作)」を古代人は使い分けていたことが明らかであり、「畑(火+田)」のルーツがより古いことを示しています。―縄文ノート「28 ドラヴィダ系海人・山人族による稲作起源論」「42 日本語起源論抜粋」「93 『かたつむり名』琉球起源説―柳田國男の『方言周圏論』批判」参照

 また、元の倭音の「あいういぇうぉ」が琉球弁で「あいういう」に、本土弁で「あいうえお」になったことが、「踊(どう)」「飲()」「遊(あ)」と「踊(どう)」「飲()」「遊(あ)」からも読み取れます。はてなブログ・ヒナフキンの縄文ノート「97 『3母音』か『5母音』か?―古日本語考」「153 倭語(縄文語)論の整理と課題」、gooブログスサノオ大国主ノート「倭語論17 『いあ、いぇ、いぉ』『うあ、うぇ、うぉ』『おあ』倭語母音論」参照

 

 

 本土弁の方言が琉球弁なのではなく、むしろ琉球弁の方言が本土弁の可能性が高いと考えます。

 「縄文に帰れ!」と言っていた岡本太郎氏は、沖縄の本土復帰にあたって「本土が沖縄に復帰するのだ」と述べましたが、「まさひろ」「海人」を飲み、「島唄」を歌いながら夢想してみませんか?

なお、薩摩半島南西端の南さつま市の栫ノ原遺跡(「かこいのはら」は元は「かこいのはる」であった可能性)は、古代には笠沙天皇家(阿多天皇家)3代の本拠地であった「阿多」に属します。

 

 

 記紀によれば、2代目の火照命(ホデリ=漁師=海幸彦=隼人)の弟の火遠理(ほをり=猟師=山幸彦=山人(やまと))は龍宮(琉球)に行って豊玉毘売(とよたまひめ)を妻とし、さらにその子の鵜葺草葺不合(うがやふきあえず)は豊玉毘売の妹の玉依毘売(たまよりひめ)に育てられて妻としています。

 その子の若御毛沼(わかみけぬ:後の神武天皇)の母と祖母は海人族・畑人族の琉球人、父は山人族(やまとぞく)であり、栫ノ原遺跡をみても縄文・弥生文化は連続しているのです。

 スサノオ大国主一族とこの天皇家の歴史をみても「弥生人(中国人・朝鮮人)征服史観」は成立せず、「縄文人自立・内発的発展史観」の探究を若い世代のみなさんに期待したいと思います。 

 

□参考□

<本>

 ・『スサノオ大国主の日国(ひなのくに)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)

 ・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)

 ・『奥の奥読み奥の細道』(アマゾンキンドル本)

<雑誌掲載文>

 2012夏「古事記」が指し示すスサノオ大国主建国王朝(『季刊 日本主義』18号)

 2014夏「古事記播磨国風土記が明かす『弥生史観』の虚構」(前同26号)

 2015秋「北東北縄文遺跡群にみる地母神信仰と霊信仰」(前同31号)

 2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(前同40号)

 2017冬「スサノオ大国主建国論1 記紀に書かれた建国者」(『季刊山陰』38号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論2 「八百万の神々」の時代」(『季刊山陰』39号)

 2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論3 航海王・スサノオ」(『季刊山陰』40号)

 2018秋「『龍宮』神話が示す大和政権のルーツ」(『季刊 日本主義』43号)

 2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(前同44号)

 2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(前同45号)

<ブログ>

 ヒナフキンスサノオ大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina

 帆人の古代史メモ          http://blog.livedoor.jp/hohito/

 ヒナフキン邪馬台国ノート      http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

 霊(ひ)の国の古事記論       http://hinakoku.blog100.fc2.com/

186 「海人族縄文文明」の世界遺産登録へ

 5000~4000年前のイギリス・アイルランドの「西のストーンサークル文明」に対し「東のウッドサークル文明」を示す6000~2000年前頃の真脇遺跡のある能登町は、能登半島地震で大きな被害を受けました。

 過疎・高齢化が進み、老朽化した多くの家屋が倒壊し、道路・水道・電気などインフラが破壊された今こそ、4000年続いた縄文海人族の歴史を世界遺産として登録をめざし、海人族である日本人の長い歴史ある定住地の1つのシンボルとして、そして全世界から人類史に関心のある人々を引き付ける観光地として復興を進めて欲しいと願っています。

 世界最古の2.3万年前頃の沖縄県南城市のサキタリ洞窟遺跡の貝製の釣り針や全国各地で発見されている鹿製の釣り針や銛、ヤス、網漁の重石、丸木舟製作に使う丸ノミ石斧の東南アジアからの分布、沖縄から北海道までの貝製腕輪やヒスイの交易、土器技術・文化の交流、日本海を超えたシベリアとの黒曜石の交易、男は危険な海に出て家は女性が守る漁村に残る母系制社会など、「男中心・狩猟・肉食・闘争・戦争文明」とは異なる海人族の「母子中心・採取漁労農耕・糖質DHA食・共同・和平文明」について、世界史に位置づける重要な役割があると考えます。

 

1 縄文遺跡世界遺産登録の経過と課題

 三内丸山遺跡大湯環状列石など4道県17遺跡で構成される「北海道・北東北の縄文遺跡群」は2020年に世界文化遺産に登録され、その取り組みの先駆性は高く評価されます。

 ただ、地域的に限定されていることから、日本列島の縄文文化・文明の全体を網羅しておらず、世界最高水準の縄文研究の成果が反映されていないといわざるをえません。

 「農耕・牧畜を基盤とした同時期の世界の文明と異なり、農耕に移行しないまま定住が営まれた採集・漁労・狩猟社会」という評価は、「農耕・牧畜・定住社会」=「文明段階」、「採集・漁労・狩猟・非定住社会」=「未開段階」とする西欧中心の文明観に基づく差別的な二分法を前提としており、文化・文明の時代区分基準にそもそも問題があると考えます。

 沖縄から南東北までの縄文遺跡群から浮かび上がり、現在に続く祭りや食文化・宗教などの縄文文化・文明をもとに、すでに登録されているユネスコ無形文化遺産の「山・鉾・屋台行事」「和食」と4つの宗教建築・文化の世界遺産を踏まえ、新たな世界遺産登録への取り組みが必要と考えます。

 

 

2 縄文遺跡の新たな世界遺産登録へ

 沖縄~南東北の全縄文遺跡群と観光・展示・案内・学習施設、現在に続く祭りや食文化・宗教などの縄文文化・文明の全体像を示す次のような新たな縄文遺跡群や縄文文化世界遺産登録が求められます。

① 土器鍋のおこげ、土器に残されたマメ・穀類の圧痕、土壌花粉、石器農具が示すイモ・マメ・穀実(ソバ・クリ等)の「縄文農耕」(焼畑農耕):土器鍋等は各地で展示。

 

② 西アフリカ原産のヒョウタン、北アフリカ原産のウリ、インド原産のリョクトウ、東南アジア原産のエゴマ、東南アジア山岳地帯原産のソバ・モチイネ・シソなど「人類移動を示す縄文食」:鳥浜貝塚遺跡などに展示。

 

③ 石床炉による焼石料理、炉穴による干物・燻製料理、土器鍋による煮炊き・蒸し料理、粉食(石皿・磨石)などの「縄文料理革命」:石床炉・炉穴、土器鍋、石皿・磨石は各地で展示。

 

④ 貝塚、貝製・鹿角製釣り針・銛、網漁の重石、丸木舟、製塩土器が示す「漁労文明」:各地に展示。

⑤ 東南アジアから琉球、九州に分布する丸木舟製作用の円筒形丸ノミ石斧、全国各地で発見されている丸木舟、海上移動に欠かせない容器のヒョウタン、土偶に見られる刺青などの「海人族文化」:各地に展示。

 

⑥ 南西諸島産・伊豆諸島産の貝輪、糸魚川のヒスイ、黒曜石、製塩土器などが示す「広域分業交易」:各地に示。

 

⑦ アフリカからの「円形平面住宅」を受け継いだ可能性のある竪穴式住居:各地に復元施設。

 

⑧ 分散住宅配置と共同祭祀のウッドサークル・ストーンサークルが示す都市形成以前の「分散定住共同祭祀社会」:ルなどは発掘展示され、真脇・小矢部・チカモリ遺跡のウッドサークルは復元されている。ウッドサークル・ストーンサークルは「円形平面住宅」を模した死者を祀る宗教施設(地母神信仰、天神信仰)の可能性。

 

⑨ 巨木6本柱・8本柱・方形柱列に見られる「巨木建築文明」:中ツ原の巨木8本柱痕は柱のみ復元、阿久・の方形柱列群は埋め戻されている。御柱祭は巨木建立の共同作業を現代に残している。

 

⑩ ホゾ・ホゾ穴仕口(組手)の「軸組工法高床式建物」(桜町遺跡など):各地に展示・復元建物。雨季に冠水する東南アジア起源の可能性。

 

⑪ 女神像や仮面女神像、妊娠土偶、出産紋土器、石棒(金精)、貝輪・耳飾りなどが示す「母系制社会」:各地に展示施設。卑弥呼の女王国、さらには各地の女神神社(稲荷神社・丹生神社・宗像神社・厳島神社浅間神社や各地の山の神神社)、金精(石棒)信仰などは現代に続く。

 

⑫ 神名火山(神那霊山)崇拝に見られる「神山天神信仰」:阿久遺跡の立石・石列は埋め戻されている。女神(ひじん=霊神)信仰や各地の神名火山(神那霊山)信仰=お山信仰は現代に続いている。

 

⑬ 巨木木柱列・環状木柱列に見られる「神籬(霊洩木)天神信仰」:吉野ヶ里遺跡の立柱や出雲大社心御柱、諏訪などの御柱祭、仏塔の心柱、住宅の大黒柱などに引き継がれる。

 

⑭ 貝輪を好み、海から生まれ海に帰るとする海人族の「海神信仰」:雛流し・精霊船浜降祭・船渡御・海上渡御・神迎えなどの神事

 

⑮ 女神像や土偶、耳飾り、縁飾り土器、香炉などが示す縄文芸術家による「縄文芸術」:各地に展示。

 

⑯ 日本人に多いY染色体D型(アフリカ西海岸にY染色体E型・D型)、頭脳の発達に不可欠な糖質・DHA食(イモマメ穀実・魚介食)が示す「人類誕生・海の道移動史」:縄文ヒョウタンは鳥浜遺跡に展示。

 

3 世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」への追加登録ではなく新規登録へ

 世界遺産として「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value)」の評価基準のうち、(ⅰ)(ⅵ)や(ⅲ)(ⅴ)の内容は、2021年の「北海道・北東北の縄文遺跡群」と較べて日本中央部縄文遺跡群は新規性があり、異なる場所・空間に共通する文化・文明を示しており、新規登録に該当します。

 沖縄~南東北の縄文遺跡群として一括・新規登録するか、あるいは分割登録するかですが、縄文文化・文明の性格として、海人族(採集・田芋栽培・漁労・海洋交易民)と山人族(採集・焼畑・狩猟民)の2つのタイプに分けて世界遺産登録を提案したいと思います。

 

 

4 世界平和と持続的発展可能な文明社会へ向けて

 今、国連が求めている「持続可能な社会(Sustainable society)」あるいは「持続敵開発可能な目標(Sustainable Development Goals: SDGsエスディージーズ)」を達成するには、西欧中心文明史観の見直しが必要と考えます。

 地球温暖化と異常気象、熱帯雨林を破壊するプランテーション、アフリカ・アジアの塩害を招く灌漑農業やアメリカの化石水依存の灌漑大規模農業、農薬・除草剤・化学肥料・原発放射性廃棄物などによる地球環境汚染、森林を破壊し大量のメタンガスを発生させる牧畜、海水温上昇によるサンゴ礁の消滅、マイクロプラスチックによる漁業・生態環境の深刻なダメージ、新興感染症の頻発など、第1次産業革命(農業革命)、第2次産業革命(工業・流通革命)、第3次産業革命(情報・通信革命)による自然破壊と食料危機、世界一体化(グローバル化)による格差拡大への不満爆発など、現在と将来の生類の生命への深刻な影響が心配されてきています。

 現在と将来の地球環境や生類の生命、ヒトの人権、生活、共同性などを基準に考えると、男性中心・西欧中心の「狩猟・肉食・闘争・戦争進歩史観」による「文明社会による野蛮・未開社会の支配・開発」という文明基準そのものの見直しが求められており、世界遺産の文化・文明の基準についても「命(DNA)の持続可能な社会」に向けて再構築すべき時と考えます。

 1万数千年の縄文時代は男中心の「狩猟・肉食・闘争・戦争」社会ではなく、母子主体の「採集漁労農耕・糖質DHA食・共同・和平」社会であり、あらゆる「命(DNAの継承)」を何よりも大事にする持続可能な「母系制共同体文明」であり、かつて世界全体にあった共通文明としてとらえなおすべきと考えます。人類はイモマメ穀実・魚介の「糖質・DHA食」と母子群のおしゃべりコミュニケーションにより、知能を発達させてきたのです。乳幼児の成長をみてもわかるように、

 すでに和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたように、恵まれた海・川・山・森・林・原の自然に育まれた食材を活かした和食は健康長寿で持続可能な食文化・文明として世界に認知され広まってきており、その起源は縄文時代に遡るのです。

 漁労・農耕具や生活用具ではなく狩猟・殺人用具を中心に時代分析を行い、古代軍国主義奴隷制国家の侵略・防御・支配拠点である「城壁都市」を「文明=civilization(都市化)」基準としたギリシア・ローマ文明で世界史を見るのではなく、「自然・命(DNA)の持続的発展可能な社会の見本となる文化・文明」という新たな視点を提案したいと考えます。

 縄文文化・文明の世界遺産登録は、かつて全世界に普遍的に存在した文化・文明を明らかにし、自然に生かされ、人間の創造的才能を育み、共に支えあい尊重しあう豊かな共同体社会をめざす共生・共同型社会への第1歩となるものです。

縄文ノート185 「184 乳児からみた人類進化と子育て家族形成」補足

 「縄文ノート184 乳児からみた人類進化と子育て家族形成」(240124)では、2004年に書いた「動物進化を追体験する子どもの遊び」をさらに発展させ、0歳児の孫に教えられて「人類進化を追体験している乳幼児の成長」論をまとめました。

 「二足歩行→手機能向上(狩猟具作成・獲物運搬)・言葉誕生(狩猟の共同作業)→頭脳肥大(肉食)」というまことしやかな「オス主導の二足歩行進化説」「狩猟・肉食進化説」が欧米だけでなく日本でもまかり通ってきていますが、乳幼児の発達を見ていると順序は違います。

 「知能発達条件の確保(おっぱいの糖質・DHA増大)→知能発達(観察・理解・記憶)→真似による手機能向上(道具使用)・会話→這い這い移動(4つ足哺乳類型)→二足歩行(サル型)」の順であり、サルからヒト進化の決定的な鍵は「母親のイモ・マメ・穀類(火使用)・魚介食によるおっぱいの糖質・DHA増大」と「イモ・マメ・穀類食がもたらした自由時間増大による母子・子育てグループ・子ども同士の楽しいおしゃべり」にあると考えます。

 カナン侵略・征服を神の命令として正当化するために作られたユダヤ教を原点とする欧州中心史観の「危機進化説」(気候変動による熱帯雨林の食料不足→サバンナでの死肉漁り・狩猟→二足歩行・言語)に対し、果実やイモ・マメ・穀類・魚介類・昆虫・小動物など食材の豊富な熱帯雨林における「快適快楽進化説」(美味しいもの・楽しいこと・新しいこと・探検などの追求)」の人類誕生史こそ未来への指針とすべきと考えます。たかだか2~3千年の「狩猟・闘争・戦争進歩史観」の延長上に希望を求めるべきではないのです。

 今回、2点、補足したいと思います。

 

1.乳児の観察・認知・記憶・模倣による道具使用について

 孫は9カ月目に入り、ようやく両手が連携してスムーズに動けるようになったので百均の「ソフトソード(やわらかチャンバラ、ソフトチャンバラ)」を渡してみました。

 そうすると、ちゃんと両手で持って机をたたいたのでびっくり。姉・兄たちのチャンバラごっこをこの数カ月じっと観察し、理解していたことにより、真似することができたのです。

 「げんこつ山の たぬきさん おっぱいのんで ねんねして だっこして おんぶして またあした」という童謡がありますが、乳児はただ「おっぱいのんで ねんねして」だけではなく、外界のいろんな出来事を観察・理解・記憶し、真似できるように準備していたのです。

 手にとるものはまず舐めるので、ソフトソードを渡すと舐めるのではないかと予想していましたが、叩こうと振り回したのであり、ソフトソードの使い方を理解し、姉兄たちから学んでいたことは明らかです。

 私の長女は保母さんに付きまとって話しかけるため「おしゃべり〇〇さん」と保母さんたちから言われていたのですが、長男は言葉がかなり遅かったのですが、喋り始めると長女のような幼児言葉のおしゃべりではなく、きちんとした大人言葉で話したので妻がびっくりしたとよく話しますが、しゃべれない間にも観察を続け、言葉を理解し、記憶していて準備していたのです。

 早々と熱帯雨林を出た700万年前頃からの直立二足歩行のラミダス猿人などや、200万年前頃からのジャワ原人北京原人とは異なり、熱帯雨林に長く留まりサルからヒトへの進化したホモサピエンスは「直立歩行」の身体機能進化が先行したのではなく、「観察・理解・記憶・真似」という頭脳の発達が乳幼児期から先行したのであり、それを支えたのが他の動物より糖質・DHA成分が多い母親のおっぱいであり、メスの「イモマメ穀類・魚介食」による「糖質・DHA」摂取と母子・子育てグループによる会話こそがその源だったのです。

 欧州中心史観の「オス主導進化説」「二足歩行進化説」「肉食進化説」には何の根拠もなく、イモマメコメ食・魚介食民族であり、母系制社会が長く続いた日本人こそその誤りを正し、「メス子ども主導進化説」「知能発達進化説」「糖質・DHA食進化説」を世界に広めるべきと考えます。

 霊長類学・文化人類学民族学の研究者は、チンパンジーボノボ、ゴリラの前に乳幼児の成長をじっくりと観察すべきであり、「魚べい」にでも行って寿司を食べながらなぜ日本人は魚や米などが好きなのにサルは魚や米などを食べないのか議論すべきでしょう。

 

2.乳児の高いエネルギー消費は頭脳発達に使われている

 『日経サイエンス』は図書館で借りて読んでいるので、いつも最新号より前の号を遅れて読むことになり、やっと2023年10月号に目を通したのですが、「カロリー計算でみる人類進化」という興味深い論文がありました。

 図2のように0歳児の代謝率(1日の総エネルギー消費量/徐脂肪対体重)には大きな差があるのですが、高いものは10歳ころまでの高い水準の幼児・児童と同じ水準で、20~60歳の代謝率より50%近くも大きいのです。

 

 「赤ん坊は胎内で母親のエネルギー消費規模を反映した発達を遂げ、小さな大人として生まれてくる。しかし、1歳の誕生日を迎える頃には、体のサイズから予測される量よりも50%も多くのエネルギーを消費するようになる。子どもの細胞は大人よりもずっと活発で、成長と発達のために懸命に働いている。この仕事の一部は神経細胞の成長とシナプスの発達であることが、幼少期の脳におけるグルコース摂取量を測定した先行研究によって示唆されている」とデューク大学進化人類学のハーマン・ポンツァー教授は書いていますが、小麦粉と牛乳・卵を書きながら、シナプス発達に必要なDHAなど魚介食により得られるオメガ3脂肪酸のことには触れていません。「肉食進化説」ではないものの「酪農・養鶏を含めた農耕民進化説」であり、魚介食を無視した西欧中心史観から抜け出してはいません。

 さらに厚労省のe-ヘルスネットの「加齢とエネルギー代謝」を見ると、図3のように乳幼児期の高いエネルギー消費量を示しています。

 10歳ころまでの子どもは活発に体を動かすのでエネルギー消費量が大きいのは当然ですが、体を動かすことが少ない0歳児も同じなのです。

 そもそも脳が消費するカロリーは人体全体の20~25%で、5~6歳では60%とされていますが、0歳児はあまり体を動かすことのない分だけ観察・理解・記憶にさらに多くのカロリ-を消費し、脳のシナプスの情報伝達機能を高めているのです。  

 前回、乳幼児期に脳のシナプス密度とDHA量が急増することを示す図4・図5を再掲しますが、脳のエネルギー消費量もまた乳幼児期に急増するのです。

 

 

 「肉食キン肉マン進化史観」から、栄養学者や乳幼児研究者の参加による「糖質・DHA食知能進化史観」への転換が求められます。

 なお、アフリカで食べられている昆虫やナマズ・カエル・トカゲ・ヘビ・ワニなどにDHAが豊富に含まれるのかどうかネットで検索しましたが、判りませんでした。どなたか、外国の文献など調べて頂けないでしょうか?

 

□参考□

<本>

 ・『スサノオ大国主の日国(ひなのくに)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)

 ・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)

 ・『奥の奥読み奥の細道』(アマゾンキンドル本)

<雑誌掲載文>

 2012夏「古事記」が指し示すスサノオ大国主建国王朝(『季刊 日本主義』18号)

 2014夏「古事記播磨国風土記が明かす『弥生史観』の虚構」(前同26号)

 2015秋「北東北縄文遺跡群にみる地母神信仰と霊信仰」(前同31号)

 2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(前同40号)

 2017冬「スサノオ大国主建国論1 記紀に書かれた建国者」(『季刊山陰』38号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論2 「八百万の神々」の時代」(『季刊山陰』39号)

 2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論3 航海王・スサノオ」(『季刊山陰』40号)

 2018秋「『龍宮』神話が示す大和政権のルーツ」(『季刊 日本主義』43号)

 2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(前同44号)

 2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(前同45号)

<ブログ>

 ヒナフキンスサノオ大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina

 帆人の古代史メモ          http://blog.livedoor.jp/hohito/

 ヒナフキン邪馬台国ノート      http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

 霊(ひ)の国の古事記論       http://hinakoku.blog100.fc2.com/