縄文ノート162 絵文字・記号・シンボルー『謎の記号 祖先からのメッセージ』から
縄文土器の表面の造形について、「縄文ノート22 縄文社会研究会八ヶ岳合宿報告」において「9.『縄文Emoji(絵文字)説』」として、日本発の「Emoji(絵文字)」が今や世界標準となっていることから、線画による絵物語や浮世絵・劇画・アニメ文化が縄文時代から続く「象形文字の前段階の絵文字」の伝統を受け継いでいるのではないか、との仮説を提起しました。
その後、「縄文ノート52 縄文芸術・模様・シンボル・絵文字について」において、芸術・模様・シンボル・絵文字の整理・定義を行い、大谷幸一氏の「幾何学図形説」、岡本太郎氏(芸術家)・梅原猛氏(哲学者)らの「渦巻文説」、大島直行氏(考古学者)の「月・蛇デザイン説」、武居幸重氏の「双分性・融合和合(交合)性・蛇・山椒魚・蛙・カマキリ・畑文様説」、大野晋氏の「インダス文明と弥生の記号の比較対照」、沖縄の「カイダ文字(11世紀前半以前)」の紹介と表1のような整理を行いました。
縄文土器等のデザインが「作家性のある芸術的デザイン、風景の中に見られる十字架や鳥居、企業マークなどのシンボルデザイン、さらには絵文字コミュニケーションツールのどのあたりに位置するのかは、いまだに答えが出せていません。『芸術(アート)、模様(パターン)、シンボル』までは言えそうですが、『絵文字(記号)』になるとまだ手掛かりはつかめていません」として、次の3点の研究課題を提案するにとどまりました。
ⅰ 縄文単位図形データベースの作成とAI分析
ⅱ 日本列島人ドラヴィダ系海人・山人族説にもとづく東インド・ミャンマー高地人の「pee(霊(ひ))」宗教と生活文化のシンボル・絵文字(記号)の収集・対照
ⅲ スンダランド文化(インドシナ半島+インドネシア諸島)の「pee(霊(ひ))」宗教・文化のシンボル・絵文字(記号)の収集・対照)
1 山下フルーツ農園の絵文字
現役時代に仕事で妻がヒアリングした長野の飯綱町の山下フルーツ農園から「農薬の特別栽培基準を満たした完熟リンゴ」を毎年、妻が取り寄せていますが、その段ボールに「絵文字」が印刷されていることに最近になって気付きました(これまで私はリンゴを食べるだけでした)。
山下フルーツ農園を他にアピールする象徴(農園のブランドマーク)としてリンゴなどが描かれているなら「シンボル」と言えますが、図の ようなデザインは山下フルーツ農園のイメージ全体を伝達する「絵文字」といえます。しかし、リンゴをジュースにして瓶につめたアップルジュースを作っているというような意味を伝達できる文章を構成する文字にはなっていません。
子どもに「絵をかいてごらん」と紙を渡すと「好きなもの」「頭に思い浮かぶもの」を次々と描くの同じようなもので、記号(サイン)で山下フルーツ農園の活動全体を伝えているのです。
「縄文ノート52 縄文芸術・模様・シンボル・絵文字について」の分類では「シンボル」と「絵文字(記号)」に分けて分類しましたが、「絵文字」を「記号(サイン)」と「シンボル」に分けて整理するとともに、シンボルの定義に「氏族・部族意識」を加えたいと思います。
2 コズミックフロント「謎の記号 祖先からのメッセージ」
2月2日BS103コズミックフロント「謎の記号 祖先からのメッセージ」の録画をやっと見ました。
4万~1万年前のスペインや南フランスの洞窟などに描かれていた記号が分析すると主に32種類に分けられ、さらに世界各地にあるというのです。
その役割としては、食べ物などの場所を示した「地図説」、出産時期などを示した「カレンダー説」、同じ仲間だということを示す「アイデンティティ説」などがあると整理されています。
彼らの分析は全てを「記号(サイン)」としてまとめていますが、私は石器時代の「絵文字」には「記号(サイン)」と「シンボル」に分けて分析する必要があるとともに、「シンボル」には祖先霊信仰や自然信仰の分析が必要と考えています。
3 縄文絵文字(尖石縄文考古館)
縄文土器のいわゆる火焔型土器の縁飾りについて、私はイモ(ヤマイモ、サトイモ)や魚介類、肉などの土器鍋で沸騰した時に噴きこぼれ、泡がはじけて蒸気と龍神(龍蛇神:トカゲ龍神)が天に昇って祖先霊に共食の合図を送ったことを現わしており、土器鍋の胴部分は鍋の中での対流による渦や泡立ちを表していると考えました。―縄文ノート15 自然崇拝、アニミズム、マナイズム、霊(ひ)信仰」「30 『ポンガ』からの『縄文土器縁飾り』再考」「108 吹きこぼれとポンガ食祭からの縄文農耕説」参照
縄文土器のその他の単位デザインについても、全国各地・各時代の土器から抽出・整理を行い、絵文字の「単位記号(サイン)」のデータベースを作成し、その意味の解明を行うことが求められます。
その際に重要なことは、土器鍋料理による死霊・祖先霊との共食という氏族・部族の共同性を確認する霊継(ひつぎ)神事や、土器鍋を囲む家族の誕生を祝う家族行事、土器鍋の豊かな食材の採集・栽培・漁労・狩猟の共同作業などを絵文字で表した可能性です。
食事をしながら死者が活躍した昔話をしたり、子どもの誕生を話したり、共同作業で食材を収穫した時の話など、楽しい会話が弾んだ様子が祭器としての縄文土鍋に描かれているのではないか、と私は考えます。縄文土器は縄によって夫婦の「産霊(むすひ)=結び」を表し、出産文土器は子どもの安産を祝い、貝文土器(貝殻文土器)は貝の豊漁を感謝したのではないでしょうか?
西洋中心史観の男中心史観・肉食進化説・戦争進化説・一神教史観は、侵略戦争を行う男の共同性から解釈しがちですが、母族社会(母系制社会)の縄文社会論から、アフリカ・東洋中心史観の「女子ども中心史観・イモ魚介食進化説・共同体進化説・霊信仰史観」からの解釈を提案したいと思います。
縄文絵文字の全体的な分析は、若い世代に期待したいところです。卒論・修士博士論文など、どんどん取り組んで世界に発信しませんか?
□参考□
<本>
・『スサノオ・大国主の日国(ひなのくに)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)
・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)
<雑誌掲載文>
2012夏「古事記」が指し示すスサノオ・大国主建国王朝(『季刊 日本主義』18号)
2014夏「古事記・播磨国風土記が明かす『弥生史観』の虚構」(前同26号)
2015秋「北東北縄文遺跡群にみる地母神信仰と霊信仰」(前同31号)
2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(前同40号)
2017冬「スサノオ・大国主建国論1 記紀に書かれた建国者」(『季刊山陰』38号)
2018夏「スサノオ・大国主建国論2 「八百万の神々」の時代」(『季刊山陰』39号)
2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)
2018夏「スサノオ・大国主建国論3 航海王・スサノオ」(『季刊山陰』40号)
2018秋「『龍宮』神話が示す大和政権のルーツ」(『季刊 日本主義』43号)
2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(前同44号)
2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(前同45号)
<ブログ>
ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina
帆人の古代史メモ http://blog.livedoor.jp/hohito/
ヒナフキンの邪馬台国ノー http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/
霊(ひ)の国の古事記論 http://hinakoku.blog100.fc2.com/