ヒナフキンの縄文ノート

スサノオ・大国主建国論から遡り、縄文人の社会、産業・生活・文化・宗教などの解明を目指します。

「縄文ノート112」への追加修正

 今回、江戸東京博物館で特別展「縄文2021―東京に生きた縄文人―」と企画展「ひきつがれる都市の記憶―江戸東京3万年史」が同時に行われたことから、私は縄文文化・文明の世界へのアピールが行われるものと期待しましたが、多くの発掘成果がまとまって展示され、「土器に残る圧痕から豆類(ダイズ・アズキ)の栽培も判明した」とはっきりと示していたものの、「縄文農耕と土器鍋糖質食文化」「母系制社会」「広域交流・交易社会」「地域分業と分散居住が進み、大規模共同祭祀が行われた部族社会」「ポンガ(沸騰と吹きこぼれ)を祝う天神信仰」など、「縄文時代」を世界史の中に文明段階として位置付けた総合的な展示などは見られず、「縄文ガラパゴス史観」「縄文閉じこもり史観」「劣等民族史観」の展示に終わっていました。

 書き落とした次の項目を追加修正しましたのでお知らせします。

12 「縄文文明」の広域・全国展開

① 黒曜石・ヒスイ・コハク・貝製品・土器などの流通や技術・デザインの広域的・全国的な交易と交流については、すでにそれぞれの研究で明らかにされ、各地の博物館・資料館でも展示されていますが、東京の縄文遺跡も各地との交流・交易の痕跡が見られます。

f:id:hinafkin:20211206165806j:plain

② まず確認しておきたいのは、西欧中心史観が規定した未開社会説の「狩猟漁撈採集の自給自足社会説」ではこのような広域的・全国的な交流・交易は説明できないのであり、狩猟・漁労・生活圏は定住地から狭い範囲でいいのです。「定住しながら広域的・全国的な交流・交易をおこなう」という縄文人の生活・社会は「狩猟漁撈採集民」という規定ではなく、「地域分業を行う広域・全国交流・交易民」としての規定が必要であることを示しています。

③ この「定住」と「交流・交易」は「定住=夫招婚の母系制社会」であり、「交流・交易=男性が入り婿となる妻問婚社会」であったのです。

 黒曜石・ヒスイ・コハク・貝製品や土器に入れた産物などは妻問のための母系家族への贈物であり、それは父系制釈迦に変わった今でも「結納」の習慣として残っています。

 そして、この広域交流・交易社会は地域分業が確立し、氏族社会から部族社会への共同体の転換が進んだと考えます。マルクスギリシア・ローマを手本とし、私有財産制から「原始共産制奴隷制社会」という社会発展段階説を唱えましたが、軍事・侵略国家のギリシア・ローマ奴隷制社会は人類史の例外なのであり、「原始共産制」という共同体社会は空想の産物という以外にありません。

④ 鉄器交易・加工・生産により筑紫・出雲・瀬戸内などで妻問を行った壱岐の海人族のイヤナギ(伊邪那岐)、新羅と米鉄交易を行い、鉄器水利水田稲作を広めて出雲・筑紫・安芸・吉備・播磨・讃岐・美和(三輪)・紀伊尾張など各地で妻問を行ったスサノオ天王、100余国で180人の御子をもうけた「豊葦原(とよあしはら)の千秋長五百秋(ちあきのながいほあき)の水穂(みずほ)国王」「五百(いほ)つ鉏々(すきすき)猶所取り取らして天下所(あめのした)造らしし大穴持」(注:鉏=鉄先鋤)と呼ばれた大国主などは、この広域交流・交易を行ってきた縄文人の伝統を受け継いでいるのです。

⑤ 「弥生人(中国人・朝鮮人)征服により水田稲作が導入されて文明段階になった。そして弥生人天皇家による建国が行われた」という大和中心史観の新皇国史観派と中国文明崇拝の左翼・リベラル史観派は奇妙な「縄文未開社会説」の共同戦線を張り、「弥生文明社会説(前者)」「弥生奴隷制社会説(後者)」にそれぞれしがみついていますが、若い考古学者・歴史学者の皆さんはこの左右の守旧派から自由になって欲しいものです。

⑥ 私は戦争発達史観の「城壁都市段階」を「文明」とする規定や、「土器デザイン」をもとにした「縄文時代」規定には反対ですが、仮に「文明」「縄文時代縄文人」などの用語を使っており、若い皆さんには西欧中心史観の「文明」や土器で時代を区分するなどという「縄文時代弥生時代」などの規定を見直すところから、日本の拝外主義の考古学や記紀に書かれたスサノオ大国主史を無視した天皇歴史学を変革していただきたいと思います。

 

□参考□

<本>

 ・『スサノオ大国主の日国(ひなこく)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)

 ・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)

<雑誌掲載文>

 2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(『季刊 日本主義』40号)

 2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)

 2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(『季刊日本主義』44号)

 2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(『季刊 日本主義』45号)

<ブログ>

  ヒナフキンスサノオ大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina

  ヒナフキンの縄文ノート https://hinafkin.hatenablog.com/

  帆人の古代史メモ    http://blog.livedoor.jp/hohito/

  邪馬台国探偵団         http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

  霊(ひ)の国の古事記論 http://hinakoku.blog100.fc2.com/