ヒナフキンの縄文ノート

スサノオ・大国主建国論から遡り、縄文人の社会、産業・生活・文化・宗教などの解明を目指します。

縄文ノート134 『サピエンス全史』批判3 世界征服史観

 前回、私は人類進化について「タカ派ハト派」の2説を整理して紹介しました。

 その表を再掲しますが、「タカ派人類進化史観」のユヴァル・ノア・ハラリ氏の目的が白人・男性・ユダヤキリスト教徒・国際金融資本中心の新たな「グローバル帝国」を作り上げるための嘘話として人類誕生からの『サピエンス全史』を書きあげたことを明らかにしたいと思います。

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1 あっと驚く「世界征服地図」

 ハラリ氏の思想がどのようなものかは、最初に彼が掲げた「兄弟たちはどうなったか?」の中の図にはっきりと示されています。そのタイトルはなんと「地図1 ホモ・サピエンスによる世界征服」なのです。

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 ホモ・サピエンスが新天地に拡散したのは「世界征服」のためというのですから、仰転・イナバウアーです。ホモ・サピエンスは誕生した時から、世界征服を目指していたというのがハラリ史観の本質であることを示しています。

 「縄文ノート64 人類拡散図の検討」では多くの図を載せましたが、全て「人類移動」「人類拡散」としており、「ホモ・サピエンスによる世界征服」とするハラリ氏の説は異端もいいところです。この本を称賛したジャレド・ダイアモンドバラク・オバマビル・ゲイツ池上彰堀江貴文氏らの思想が同じような世界征服史観であるのにはゾッとします。

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 なお、この図は次の5点の誤りを犯し、「人類の世界征服」嘘話をでっち上げています。

 ① 人類誕生を東アフリカのサバンナとしている。

 ② 人類拡散の熱帯・亜熱帯の「海の道・海辺の道」(インド洋・地中海・太平洋など)の横移動を除外している。

 ③ 人類拡散の海から続く「川の道」(ナイル・チグリスユーフラテス・インダス・長江黄河)を除外している。

 ④ 西洋人・東欧人拡散のハブ(中継点)をユダヤ人の「ノアの箱舟伝説」のアララト山あたりに置いている(ななんと露骨な!)。

 ⑤ 東洋人拡散のハブ(中継点)を乾燥地帯(イラン・トルクメニスタンあたり)に置いている。

 

 以下、これまで書いてきたことの繰り返しになりますが、具体的に批判していきたいと思います。

 

2 「サバンナ人類誕生説」の嘘話

 東アフリカのサバンナで人類が誕生したという説は、猿人(アウストラロピテクス:390~290万年前頃)や原人(ホモ・ハビリス:240~140万年前頃)の化石がタンザニアなどの東アフリカで発見されたことからの化石学者説です。―「縄文ノート64 人類拡散図の検討」参照

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 ハラリ氏が採用したサバンナ人類起源説は「乾燥したサバンナから発見された人体化石」と石器に基づくものであり、死体や木の穴掘り棒・銛などがすぐに分解してしまう高温多湿の熱帯雨林などではその痕跡が見つかることがないことから、人類誕生地サバンナ説は必要十分条件を満たしていません。他の起源説の検討がないからです。

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 考古学にはこのような「サンプル限界の罠」がつきものであり、化石からだけの人類誕生嘘話から考古学者・歴史学者は卒業すべきです。

 一方、熱帯雨林人類起源説には、類人猿とホモ・サピエンスの総合的な研究から、次のような裏付けがあります。―縄文ノート「43 DNA分析からの日本列島人起源論」「62 日本列島人のルーツは『アフリカ湖水地方』」「64 人類拡散図の検討」 「70 縄文人のアフリカの2つのふるさと」「81 おっぱいからの森林農耕論」「87人類進化図の5つの間違い」「88 子ザルからのヒト進化説」「89 1段階進化論から3段階進化論 へ」参照

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① ホモ・サピエンスと分かれたゴリラ・チンパンジーボノボの生息域はアフリカ西海岸のニジェールコンゴ川流域の熱帯雨林である。縄文ノート「70 縄文人のアフリカの2つのふるさと」「89 1段階進化論から3段階進化論へ」参照

 

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② メス子どものおしゃべりと共同子育て・共同採集漁撈が乳幼児期の知能を発達させ、教育が子どもの生存率を高めた。―縄文ノート「88 子ザルからのヒト進化説」「107 ドーパミンからの人類進化論―窮乏化進化か快適志向進化か」「92 祖母・母・姉妹の母系制」「103 母系制社会からの人類進化と未来」「126 『レディ・サピエンス』と『女・子ども進化論』」

 

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③ 糖質(脳の活動エネルギー)・DHA(シナプス形成)食が頭脳の発達を支えた。―縄文ノート「25 『人類の旅』と『縄文農耕』、『3大穀物単一起源説』」「81 おっぱいからの森林農耕論」参照

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④ 水中歩行採集(魚介類・両生類・爬虫類)が二足歩行と手機能の向上をもたらした。―縄文ノート「85 二足歩行」を始めたのはオスかメス・子ザルか」「「92 祖母・母・姉妹の母系制」「111 9万年前の骨製銛からの魚介食文明論」参照

 

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⑤ メス・子どもの採集のための穴掘り棒(イモ類・イモムシ)・銛・調理具の製作が手機能と脳の発達を促し、食料調達を容易にした。―縄文ノート「111 9万年前の骨製銛からの魚介食文明論」「113 道具からの縄文文化・文明論」参照

 

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⑥ カメルーン山やルウェンゾリ山などの火山噴火や熱帯雨林の雷による火の調理使用を促した。「縄文ノート89 1段階進化論から3段階進化論へ」参照

 

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⑦ Y染色体D型族はアフリカ西海岸でY染色体E型族と分かれた。

 さらに、熱帯雨林が人類誕生の地であることを裏付けるのが、ナイジェリア・チベットアンダマン諸島ミャンマー沖)・日本列島などのY染色体D型族と西アフリカのコンゴイド族に見られるE型の分布です。―縄文ノート「43 DNA分析からの日本列島人起源論」「46 太田・覚張氏らの縄文人『ルーツは南・ルートは北』説は!?」「62 日本列島人のルーツは『アフリカ高地湖水地方』」「70 縄文人のアフリカの2つのふるさと」参照 

 

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⑦ ヒョウタンとマザーイネ

  ニジェール川流域原産のヒョウタンが若狭の鳥浜遺跡(12000~5000年前頃)、青森の三内丸山遺跡(5900-4200年前頃)から見つかっていることや、ゴンドワナ大陸時代の全てのイネ科穀類のルーツ(マザーイネ)がニジェール川流域の可能性が高いことからみても、人類は砂漠・サバンナ地帯よりも糖質・魚介食材の豊富な熱帯・亜熱帯の海沿い・川沿いを拡散したことが明らかです。―縄文ノート「25 『人類の旅』と『縄文農耕』、『3大穀物単一起源説』」「26 縄文農耕についての補足」「55 マザーイネのルーツはパンゲア大陸」参照

 

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3 「ウォークマン史観」の嘘話

 「脳の進化の答えはわからない」と言いながら、続けてハラリ氏は「人間ならではの特性として、直立二足歩行も挙げられる」として、サバンナで獲物を追い、石を投げたり合図で手を使い、道具を作るようになって進化したという自説を展開します。そして、直立歩行によって産道が狭まり、早期に主産して子育てをする必要が生じ、助け合い、教育できるようになった、という自説に読者を誘導しています。

 ここでは、①サバンナ人類誕生説、②二足歩行サバンナ起源説、③二足歩行後の女性たちの子育て・採集コミュニティ形成説という3つの「嘘話」を展開し、その延長上に人類は草食動物を追い、他のヒト属を絶滅して世界征服した、という嘘話を作り上げています。

 既に述べたように、人類は海辺・水辺の熱帯雨林での糖質(イモ類・穀類)・DHA(魚介類)食によってサルから進化したのであり、その拡散はサルとヒトの食性や糖質食に不可欠な塩分の摂取からみても、熱帯・亜熱帯の「海の道・海辺の道」(インド洋・地中海・太平洋など)の横移動だったのです。

 

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 「採集漁撈主・狩猟従」が人類の現代まで続く一貫した食生活であったことをハラリ氏は無視した男性優位の狩猟・肉食人種説です。

 ハラリ氏の「サバンナ人類誕生説(化石起源説)→二足歩行進化説→ウォークマン世界拡散説」は女子ども主導の熱帯雨林人類誕生の糖質・DHA採集漁撈・食生活を無視した嘘話であり、羊飼いの狩猟・遊牧民であったユダヤ人男性を人類進歩の頂点に置こうとする「人類は野生動物を追い、他のヒト属を殺戮して世界を征服した」という嘘話という以外にありません。

 ハラリ氏がユダヤキリスト教の神を嘘話とした点は評価できますが、その代わりに「ホモ・サピエンス世界征服」という新たな西欧中心史観の嘘話をでっち上げたのです。

 人類の多くは竹筏や丸木舟、樹皮・獣皮カヌーで食料の豊かな海辺の熱帯雨林・亜熱帯地域を通って世界に拡散し、交易・交流したのです。水や食料、塩の乏しい乾燥地帯を狩りをしながらトボトボ歩いて世界に拡散したのではありません。―縄文ノート「64 人類拡散図の検討」「63 3万年前の航海実験からグレートジャーニー航海実験へ」「66 竹筏と「ノアの箱筏」参照

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 海洋交易民であった豊かなカナン人フェニキア人)の国々を滅ぼして建国し、今度は農業・交易国のエジプト・バビロン・ローマの支配下に置かれた貧しく野蛮な羊飼いのユダヤ人の劣等感と原罪を隠し、「狩猟採集民の世界征服史」のホモ・サピエンス史としたのがハラリ氏固有の歴史観であり、海洋交易民のギリシア・ローマ文明、エジプト・メソポタミアインダス文明、日本文明は無視し、農耕民文明のエジプト・メソポタミア・インダス・中国文明などは「農耕がもたらした繫栄と悲劇(環境破壊と人の家畜化)」の中に押し込めているのです。「狩猟採集民世界征服史観」のトンデモ本と言わざるをえません。

 

4 「4河川文明無視」の嘘話

 前述のように、ハラリ氏のサピエンス全史は、大規模灌漑農業が発展し、文字・数学・天文学・宗教・都市などの文化が生まれたエジプト・メソポタミア・インダス・長江黄河文明の正当な位置づけを欠いています。アフリカ・アジア人の文明にコンプレックスを持つ西欧中心史観の特徴をよく示しています。

 この4大文明のうち、エジプト文明ナイル川源流のアフリカ高地湖水地方から川沿いに下って沖積平野で形成された「川下り型文明」であるのに対し、メソポタミア・インダス・長江黄河文明は「海の道」から川を上った「川上り文明」であるという違いをみせています。―縄文ノート「56 ピラミッドと神名火山(神那霊山)信仰のルーツ」「57 4大文明と神山信仰」参照

 

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 糖質(イモ・穀類)・DHA(魚介)食からみても、食料の豊富な海沿い・川沿いに人類が拡散したことは明らかです。特に、「脳神経を活性化し、記憶力の向上などの効果がある」DHAが多いおっぱいにはナマズや青魚食が欠かせず、人類は海と川の幸によって知能の向上を果たしたのです。―縄文ノート「81 おっぱいからの森林農耕論」「111 9万年前の骨製銛からの魚介食文明論」参照

 ここからは、私の好きであった浦沢直樹さん作画の『MASTERキートンマスターキートン』に思い切り脱線して気分転換したいと思いますが、主人公の平賀=キートン・太一は大学講師と保険会社ロイズの探偵をしながら「西欧文明ドナウ起源説」の証明を行うというロマンあふれる物語です。

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 私もまた人類は黒海からドナウ川ライン川ドニエプル川、ドン川沿いに、カスピ海からヴォルガ川沿いに、地中海からローヌ川沿いなどに拡散したのではないか、という可能性を夢想しています。ドニエプル川流域からヴォルガ川流域にかけてのクルガン文化仮説(6000~5000年前頃)があるものの旧石器時代の明確な痕跡は見つかってはいないようですが、エジプト・メソポタミア・インダス・長江黄河文明や日本の信濃川・姫川・天竜川・富士川源流の神山天神信仰と縄文文明などからみても、その可能性は十分にあると考えています。

 梁啓超江上波夫の「4大文明論」、マルクス・エンゲルスの「支配階級文明」論、アーノルド・J・トインビーの地域性・文化性・宗教性を分析に加えた「西ヨーロッパ文明、東ヨーロッパ文明(ビザンチン文化→帝政ロシア)、アラブ文明、ヒンズー文明、中国文明儒教)、日本文明(大乗仏教)」の6文明論、梅原猛安田喜憲氏の「縄文文明=森の文明」論、梅棹忠夫氏の水平軸・地域軸、自然・気候風土・農業環境軸での「生態史観文明」論、川勝平太氏の「海洋史観文明」論、中尾佐助・佐々木高明氏らの「照葉樹林文化」論などと較べると、ハラリ氏のホモ・サピエンス史観がいかに偏ったものであるかは明白です。―縄文ノート「48 縄文からの『日本列島文明論』」「49 「日本中央縄文文明」の世界遺産登録をめざして」「57 4大文明と神山信仰」「59 日本中央縄文文明の世界遺産登録への条件づくり」「77 『北海道・北東北の縄文遺跡群』世界文化遺産登録の次へ」「82 縄文文明論の整理から世界遺産登録へ」参照

 

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 なお、私は糖質・DHA食論、土器鍋食論、縄文(焼畑・水辺水田)農耕論、母系制社会論、神山天神(ピー)信仰論、共同体文明論などから日本文明論(縄文文明論)を考えて世界遺産登録を願っており、ハラリ氏の薄っぺらな「狩猟採集民の世界征服史観」を認めることなどできません。―縄文ノート「61 世界の神山信仰」「75 世界のビーナス像と女神像」「86 古代オリンピックギリシア神話が示す地母神信仰」「90 エジプト・メソポタミア・インダス・中国文明の母系制」「92 祖母・母・姉妹の母系制」「103) 母系社会からの人類進化」参照

 

5 「西欧人アララト山ルーツ説」の嘘話

 ハラリ氏の「地図1 ホモ・サピエンスによる世界征服」を再掲しますが、この図では黒海黒海の南のアルメニアとの境のトルコ領にあるアララト山あたりからヨーロッパに人類が移動したかのようにとれる図になっています。

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 旧約聖書『創世記』の「ノアの方舟」伝説によれば、アダムから数えて10代目の子孫、ノアに神は命じて方舟を作らせ、大洪水を起 こさせてノア一家だけが助かり、アララト山にたどり着いたとしていますが、古代メソポタミアの伝説的な王ギルガメシュの洪水伝説をもとにチグリス・ユーフラテス川中・下流から源流部に場所を移してユダヤ人がつくりかえたものであり、ユダヤ人の故郷がアララト山周辺の羊飼い部族であったことを示しています。―「縄文ノート66 竹筏と『ノアの箱筏』」参照

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 ユダヤ教キリスト教を「嘘話」として批判しながら、旧約聖書の「ノアの方舟」選民伝説をちゃっかりと使用し、アララト山あたりに住んでいたユダヤ人が西欧人のルーツであるかのように描いた新たな「嘘話」の「ホモ・サピエンスによる世界征服地図」を作り上げているのです。

 しかしながら、この世界征服地図はユダヤ人にとっては天敵のナチスヒトラーの「アーリア人」説(イラン・アーリア人ルーツ説)や、ユダヤ人差別・迫害を行ったロシア・ウクライナ南部を起点とする「インドヨーロッパ語族」説(クルガン仮説:ロシア・ウクライナ南部のクルガン文化をルーツとする説)と重なりますが、ハラリ氏の世界征服史観としてはそれでいいのでしょうか?

 

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 私はこの「インドヨーロッパ語族」説はインド植民地化を進めたイギリス人や、ギリシア・ローマ文明に劣等感を持ったドイツ人のアーリア民族説による偏向を受けた言語分析(音韻と単語)とみており、図19に見られるように言語の幹である「SVO・SOV言語構造」からみて西欧・東欧言語とトルコ・モンゴル・イラン・インド系言語は別系統と考えています。

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 なお、メソポタミア神話の最古のシュメール神話は、「海の女神」ナンム(Nammu)が天地を生み、全ての神々を生んだ母なる祖先と称され、蛇の頭を持つ蛇女神として表現されていることから明らかかなように、アフリカを出てインド洋かアラビア海ペルシャ湾を通ってチグリス・ユーフラテス川の河口から都市建設を始めた部族であり、アララト山あたりからチグリス・ユーフラテス川を下ってきたのではありません。―縄文ノート「57 4大文明と神山信仰」「90 エジプト・メソポタミア・インダス・中国文明の母系制」参照

 

6 「東洋人乾燥地帯ルーツ説」の嘘話

 さらに許せないハラリ氏の「嘘話」は、全東洋人・アメリカ原住民の拡散のハブ(中継点)を乾燥地帯のステップ気候の西アジアのイラン、中央アジアトルクメニスタンあたりに置いていることです。

 ここには、熱帯・亜熱帯・温帯のエジプト・メソポタミア・インダス・長江黄河文明などの農耕文明などから目を逸らせ、狩猟・遊牧民の世界征服を歴史の中心におきたいユダヤ人であるハラリ氏の意図はミエミエです。

 海沿いの人類拡散ルートはY染色体亜型の分析から図20を始め多くの説が出されているにも関わらずハラリ氏はそれらを無視しており、科学者というよりはグローバリズムの「人類世界征服説」のアジテーター・新興宗教者のようです。期待して読んだだけに、がっかりですが、日本を始め世界の研究者たちが批判していないのが残念です。―縄文ノート「43 DNA分析からの日本列島人起源論」「45 縄文人ドラえもん宣言」「46 太田・覚張氏らの縄文人『ルーツは南・ルートは北』説は!?」「63 3万年前の航海実験からグレートジャーニー航海実験へ」「64 人類拡散図の検討」参照

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 『DNAでたどる日本人万年の旅』の著者の崎谷満氏の図21などは、7 ~5万年前に南インドからニューギニアオーストラリア大陸などに移住したオーストライドが「海・海辺の道」を通ったとしながら、なぜかその後にアフリカを出たモンゴロイドは同じように「海・海辺の道」を通ったとはしていません。

 

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 Y染色体O型が多い東南アジア人・中国人(「主語―動詞-目的語」言語族)や、Ⅾ型が多い日本人(「主語-目的語-動詞」言語族)が海・海辺の道を通らずにヒマラヤ山脈の麓から東インド・東南アジアの山岳地帯を移動したとしているのは意味不明です。

 「縄文ノート39 『トカゲ蛇神楽』が示す龍神信仰とヤマタノオロチ王の正体」において、「黄河流域の夏王朝龍神信仰は、龍の文様の入った玉璋(ぎょくしょう:刀型の儀礼用玉器)のデザインがベトナム→四川→二里頭(黄河流域)とシンプル化していることからみて東南アジア起源で、龍神は背中に突起があるトカゲをモデルにしたものである可能性が高い」と書きましたが、中国人は東南アジアの大トカゲが棲む海辺から北上したことが明らかであり、それは細長く、炊くとパラパラしたインディカ米を好むことからも明らかです。

 日本人とチベット人などに多いⅮ型のドラヴィダ系海人・山人族は、前掲の図10に示したように、南インドから東南アジア山岳地帯をへて海の道をやってきたジャポニカ米やもち食を好む部族と、チベットからシベリアを横断して北海道にやってきた部族が合流したと考えています。―縄文ノート「43 DNA分析からの日本列島人起源論」「45 縄文人ドラえもん宣言」「64 人類拡散図の検討」など参照

 徳川幕府鎖国300年により、日本人はすっかり「海は怖い・船が嫌い」になり、さらに明治維新からは欧米拝外主義に転換して「狩猟・肉食人類進化説」にはまってしまい、「ウォークマン史観」にどっぷりとつかっていますが、西アフリカからの日本人の大移動から人類史に提案する気概を持ちたいものです。

 なお、私が小学生の頃だったと思いますが「日本語はウラル・アルタイ語フィンランド語やトルコ語モンゴル語朝鮮語・日本語)」と習い、ずっとそう思い込んでいましたが、大野晋氏の『日本語とタミル語』(1981年)や安本美典氏の『日本語の起源を探る』(1985年)などを読み、さらに霊(ひ)信仰の神山天神信仰や稲作起源の分析を行ううちに、交流・交易や他民族支配により借用が起りやすい数詞や身体語などの基本語の統計的分析よりも、民族固有の宗教語や農耕語などの希少性・恒常性のある単語分析と言語の幹である言語構造の比較こそが重要と考えるようになり、現在は倭音倭語・呉音漢語・漢音漢語の3層構造の日本語のルーツはドラヴィダ語であると考えており、それこそがDNA分析やヒョウタン・イモ食・稲作・もち食、霊(ひ)信仰の起源とも符合すると考えています。―縄文ノート「26 縄文農耕についての補足」「28 ドラヴィダ海人・山人族による日本列島稲作起源論」「29 『吹きこぼれ』と『お焦げ』からの縄文農耕論」「36 火焔型土器から『龍紋土器』へ」「37 『神』についての考察」「38 『霊(ひ)』とタミル語『pee(ぴー)』とタイ『ピー信仰』」「41 日本語起源論と日本列島人起源」「42 日本語起源論抜粋」「53 赤目砂鉄と高師小僧とスサ」「80 『ワッショイ』と山車と女神信仰と『雨・雨乞いの神』」「115 鳥語からの倭語論」 

 

7 「グローバル帝国主義」のためのユダヤキリスト教に代わる嘘話

 ヘブライ大学歴史学部の終身雇用教授であるユヴァル・ノア・ハラリ氏のことはNHKのテレビ番組で知り(録画しているはずですが、見てはいません)、本を買いましたが私が自分で人類史について考えきる前にカンニングするのは嫌で読んでおらず、それなりの私なりの答えを見つけたのでやっと読みました。

 ユダヤ人差別を受けてきた彼が、どのように人類史をみているのか興味津々でしたが、「ユダヤ教キリスト教」「貨幣」を嘘話と断言したことは評価できますが、ではユダヤ人やユダヤ教が元となったキリスト教イスラム教全体の歴史や金融資本の歴史をどうとらえているのか、ユダヤ教がどのようにして生まれたのか、ユダヤ人が関わった金融資本の歴史的な役割がどうであったのかの分析・記述はなく、実にがっかりでした。

 ユダヤ人差別をはね返す役割などなく、さらには現代の格差社会化や民族間戦争、地球環境・食料などの危機に対して有効な歴史的教訓もなく、狩猟民族を原点に置いた新たな「世界征服」の嘘話のための作業(成功してはいませんが)でしかないように思いました。

 さらに批判を続けたいと思います。

 

□参考□

<本>

 ・『スサノオ大国主の日国(ひなのくに)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)

 ・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)

<雑誌掲載文>

 2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(『季刊 日本主義』40号)

 2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)

 2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(『季刊日本主義』44号)

 2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(『季刊 日本主義』45号)

<ブログ>

  ヒナフキンスサノオ大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina

  ヒナフキンの縄文ノート https://hinafkin.hatenablog.com/

  帆人の古代史メモ    http://blog.livedoor.jp/hohito/

  邪馬台国探偵団         http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

  霊(ひ)の国の古事記論 http://hinakoku.blog100.fc2.com/