ヒナフキンの縄文ノート

スサノオ・大国主建国論から遡り、縄文人の社会、産業・生活・文化・宗教などの解明を目指します。

188 ハラリ氏の嘘話『サピエンス全史』批判

 3月13日、縄文社会研究会・東京の顧問・尾島俊雄早大名誉教授の研究室でユヴァル・ノア・ハラリ氏の『サピエンス全史』などの翻訳者柴田裕之氏を招いての学習会があり、私は縄文ノート130~139の「『サピエンス全史』批判」1~5(220331~0523)の要点をまとめたレジュメと、182「人類進化を支えた食べもの」、186「『海人族縄文文明』の世界遺産登録へ」(231204)を報告しました。

 他民族に征服されることのなかったわが国は、新旧石器時代(日本では旧石器・縄文時代)の文化・文明が現代まで継承されており、しかも世界に類のない緻密な縄文時代研究と博物館・復元施設、市民体験活動などがあり、一神教以前の全世界の石器時代の歴史解明を先導するべき役割を担うべきと考えます。

 ユダヤ・キリスト・イスラム教などの終末思想・優生思想に基づく一神教をハラリ氏は「嘘話」とした点は高く評価しますが、ユダヤ教の征服・殺戮・奴隷化を奨励する神の代わりに、「人類は誕生した時から征服者であり殺戮者として進化してきた」という新たな嘘話を創作し、ユダヤシオニストの思想を世界に広めようとしています。

 今、この侵略的な白人・男性中心の「肉食・狩猟・闘争・戦争進歩史観」を批判するハト派進化説が次々と生まれてきていますが、ハラリ氏はそれらを無視し、タカ派進化説の旗手としてあがめられてきていますが、その先には終末の未来しかないことをウクライナパレスチナ戦争や地球環境悪化による異常気象・食料危機などは示しています。

 今こそアフリカで誕生しアフリカ・アジア・南北アメリカで進化した数万年の人類史を辿り、たかだか2千数百年の西欧中心文明の先を展望してみませんか?

 以下のレジュメ(要約)は説明のためのものなので、読んだだけでは理解しにくいと思いますので、元の縄文ノート130~139を見ていただければ幸いです。

 

1 まえがき:ヒナフキンの縄文ノート130(2022年3月31日)

 ユヴァル・ノア・ハラリ氏の『サピエンス全史』をざっと読みました。

 伝説やユダヤ教キリスト教イスラム教、イデオロギー社会主義、人間至上主義)、貨幣信用などを「嘘話(虚構)」と批判し、「嘘話」で形成された集団によって人類が進歩したと勇気ある分析を行い、嘘話を信じる人たちに大きな影響を与えた点は高く評価したいと思います。・・・

 しかし、ハラリ氏は「唯一絶対神」を発明し、カナン(現在のイスラエル)を神が与えた「約束の地」として侵略・殺戮・征服・支配を行い、金融資本主義を先導したユダヤ人の「原罪」を隠した「嘘話ユダヤ教・金融資本主義」から説明すべきであったにも関わらず、それを避けています。ユダヤ人差別の中にあるハラリ氏には思想家としての限界を感じました。

 「唯一絶対思想」を考えたマルクスもこの「唯一絶対神」思想の延長にあり、どちらも同じように「宗教・思想の嘘話の統一による人類の統一」(グローバリズム)を目指しており、その延長上にハラリ氏もまたいるのではないか、という印象を受けました。

 また、彼の人類起源論・人類拡散論のまとめは、古くさい白人中心史観の男性中心史観、肉食・狩猟・闘争・戦争進化史観の定説の要約にすぎず、最近の研究成果を踏まえておらず、期待を裏切られてがっかりでした。カナン(フェニキア)人やシュメール人ストーンヘンジなどをつくったブリトン人、4大文明のエジプト・インダス・中国文明、土器鍋を囲んだ1万数千年の縄文人の歴史など、ユダヤ人・ローマ人の歴史以前の世界史を無視した西洋中心史観です。

 その結果、現在の課題である「戦争・侵略なき世界」「グローバリズムの格差なき文明社会」「地球環境問題」「貨幣嘘話=拝金主義なき世界」への展望を示すことはできず、「幸福度」「人生の意義」などというボンヤリとした「超ホモ・サピエンス」時代を提案しているのは「竜頭蛇尾」もいいところと思います。

 この本は宗教・貨幣・思想の「嘘話」から覚めるために多くの人に読んで欲しいと思いますが、そこから肉食・狩猟・戦争進化論の西欧中心史観やユダヤ・キリスト・イスラム一神教奴隷制ローマ帝国近代科学社会後の奴隷制アメリカ帝国などを冷徹に批判し、縄文文明などアフリカ・アジア・南北アメリカを中心に置いた世界史の解明に進み、未来社会を展望する若い人たちが出てきて欲しいものです。

 『サピエンス全史』を読んで思い出されるは、古くさい話で恐縮ですが1960・70年代の「主意主義(われ思うわれあり)対唯物史観(存在が意識を規定する)」、「実存主義(実存は本質に先立つ)」「主体性論(自らの意志による行動)」「武谷弁証法(客観的法則の意識的適応)」などの議論です。

 青くさいと思われるかも知れませんがその議論を思い出していただくと、「吉本共同幻想論」や「ハラリ嘘話論」は「人間の存在・実存・主体性・意識性を欠いた受動性(嘘話付和雷同性)批判」にしかすぎず、1970年代からの運動の中で作り上げてきた新しい「共同性・協働性・公正性」や「多様性」「平等性」「生類愛」「共生」などの豊かな思想と実践の反映は見られません。ハラリ氏は帝国主義イスラエルに暮らしてきておりやむをえないと思いますが、1970年以前の古くさい思想のままです。この間のウクライナ戦争に対するロシア支持の「化石左翼」メンバーの化石度と同じように感じずにはおれません。

 なお、私はグロ-バリズムの「世界単一市場化の世界支配と不均等発展」には組せず、全ての民族・地域の自立・経済的発展と尊厳を願う汎民族・汎地域主義者であり、西欧キリスト教社会のユダヤ人差別・迫害・大量殺戮を強く憎むものであり、私の批判は唯一絶対思想のユダヤ教マルクス主義亜流、イスラエルシオニストパレスチナ支配・迫害・殺戮に限って向けられているものであり、反ユダヤ主義者ではないことを改めて強調しておきたいと考えます。

 

2 狩猟・遊牧民族史観:ヒナフキンの縄文ノート133(2022年4月10日)

⑴ 「狩猟民族に学ぶべき」???

⑵ 「ホモ・イミューン(免疫力の高い人間)」の生き残り

⑶ 「脳の進化不明説」のインチキ

3 世界征服史観:ヒナフキンの縄文ノート134(2022年4月14日)

⑴ あっと驚くハラリ氏の「世界征服地図」

⑵ 「サバンナ人類誕生説」の嘘話

① ホモ・サピエンスと分かれたゴリラ・チンパンジーボノボの生息域はアフリカ西海岸のニジェールコンゴ川流域の熱帯雨林である。

② メス子どものおしゃべりと共同子育て・共同採集漁撈が乳幼児期の知能を発達させ、教育が子どもの生存率を高めた。

③ 糖質(脳の活動エネルギー)・DHA(シナプス形成)食が頭脳の発達を支えた。

④ 水中歩行採集(魚介類・両生類・爬虫類)が二足歩行と手機能の向上をもたらした。

⑤ メス・子どもの採集のための穴掘り棒(イモ類・イモムシ)・銛・調理具の製作が手機能と脳の発達を促し、食料調達を容易にした。

⑥ カメルーン山やルウェンゾリ山などの火山噴火や熱帯雨林の雷による火の調理使用を促した。

⑦ Y染色体D型族はアフリカ西海岸でY染色体E型族と分かれた。

⑧ ヒョウタンとマザーイネのルーツはアフリカ

 

⑶ 「ウォークマン史観」の嘘話

⑷ 「4河川文明無視」の嘘話

⑸ 「西欧人アララト山ルーツ説」の嘘話

⑹ 「東洋人乾燥地帯ルーツ説」の嘘話

 

4 嘘話(フェイク)の人類進化説:ヒナフキンの縄文ノート137(2022年5月6日)

⑴ 5W1Hがない「ハラリ認知革命説」

⑵ 嘘話が先か、共同利益が先か?

⑶ 擬人化を神格化と勘違いさせるハラリ氏の嘘話

 ―ライオン像より妊婦女性像・女神像こそ注目すべき

⑷ ハラリ氏の「認知革命」の怪しい定義

⑸ ハラリ氏に必要なのは歴史からの具体的な教訓

 

5 狩猟採集民の「平和と戦争」:ヒナフキンの縄文ノート139(2022年5月23日)

⑴ 「狩猟採集民の豊かな暮らし」?

⑵ 「肉食史観」対「糖質・魚介食史観」

⑶ 現代人の肥満のルーツは狩猟採集民?

⑷ 「古代コンミューン派」対「永遠の一夫一妻制派」??

⑸ 遺伝子学無視の人類と犬だけの優性思想

⑹ サバンナは「原初の豊かな社会」?

⑺ アニミズム否定による嘘話進化説

⑻ 「平和か戦争か?」は「沈黙の帳」???

 

□参考□

<本>

 ・『スサノオ大国主の日国(ひなのくに)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)

 ・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)

 ・『奥の奥読み奥の細道』(アマゾンキンドル本)

<雑誌掲載文>

 2012夏「古事記」が指し示すスサノオ大国主建国王朝(『季刊 日本主義』18号)

 2014夏「古事記播磨国風土記が明かす『弥生史観』の虚構」(前同26号)

 2015秋「北東北縄文遺跡群にみる地母神信仰と霊信仰」(前同31号)

 2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(前同40号)

 2017冬「スサノオ大国主建国論1 記紀に書かれた建国者」(『季刊山陰』38号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論2 「八百万の神々」の時代」(『季刊山陰』39号)

 2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論3 航海王・スサノオ」(『季刊山陰』40号)

 2018秋「『龍宮』神話が示す大和政権のルーツ」(『季刊 日本主義』43号)

 2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(前同44号)

 2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(前同45号)

<ブログ>

 ヒナフキンスサノオ大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina

 帆人の古代史メモ          http://blog.livedoor.jp/hohito/

 ヒナフキン邪馬台国ノート      http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

 霊(ひ)の国の古事記論       http://hinakoku.blog100.fc2.com/