縄文時代というと、野蛮な未開社会であり、ほとんどの人はその解明が現代社会やその未来にとって価値があるなどとは考えてはいないように思います。単なる年寄りの好奇心からの趣味と思われるに違いありません。ましてや、気候変動が実感され、アフリカや中東では乾燥化による食糧危機があり、コロナが心配で、格差社会化で若者の安定した仕事・生活など危うい現在です。
しかしながら、前にも述べたように、プルトニウム239の半減期が3万年、10・4・2万年周期の気候変動、パンデミック100年周期説、一神教の対立などを考えると、私たちの遠い先祖が危機にかられてアフリカを出て、日本列島にまでたどり着いた探究心と冒険心、開拓心にあふれた大移動の歴史をたどってみることは、参考になるように思います。
ここでは縄文社会・文化・文明についてこれまで検討してきた経過と課題をまとめ、より多くの方々の探究のための資料として公表しました。 210204 雛元昌弘
※目次は「縄文ノート60 2020八ヶ岳合宿関係資料・目次」を参照ください。
Ⅵ-20 縄文社会・文化・文明論の経過と課題
200927→210204
縄文社会研究会のこれまでの活動をまとめた「1.縄文社会研究会の経過」についてはいずれ会のHPで紹介するためここでは省略し、私の立ち位置や学習内容と課題、日本列島人起源論の論点整理を紹介します。
1.私の立ち位置
⑴ プランナー(計画家)として
・薄く広く総合的に検討し、「最少矛盾仮説」の検証による解明を行う。
・「縄文社会・文化・文明」を現代・未来に活かす。
―自然志向、共同性、食文化、芸術など
―体験学習や観光、世界遺産登録
⑵ 建築(建築史、都市計画、建築基本計画・デザイン、環境計画)として
・環境共生都市・住宅、森林都市、木の文明、共同建築(共同体事業)など
・スサノオ・大国主建国から遡った縄文社会・文化・文明論の解明
―霊(ひ)信仰、母系制社会、巨木建築、海洋交易など
⑷ 海人(あま)・山人(やまと)民族論から
・「海の道」日本列島人起源論(自立心・探究心・冒険心・交流交易性など)
・海洋交易、妻問夫招婚に見られる「海人族性」
・山上天神信仰に見られる「山人族性」
⑸ 母系制社会論から
・霊(ひ)・霊継(ひつぎ)信仰(勾玉・壷棺・甕棺・棺)
・地(母)神・海神信仰、性器信仰、女神信仰、山神女性神信仰
⑹ 言語論・方言論から
・「主語-目的語―動詞」言語族論
・「倭音倭語―呉音漢語―漢音漢語」3重構造論、倭流・倭製漢字用法
・方言北進・東進論(方言周圏論批判)
⑺ 宗教・芸術論から
・霊(ひ)宗教論(産霊・霊継)・霊人・神那霊山・神籬(霊洩木))
・性器信仰論(石棒・環状列石・縄文・しめ縄・縁産霊(えんむすび))
・アマ=海=雨=天、蛇・龍・雷からの海神・地神・天神信仰統一論
⑻ 文明論から
・水平軸による文明論(西欧型・アジア型・アメリカ型)
ー小麦・米・トウモロコシ型、牧畜型、焼畑型・漁撈型など
・歴史軸による共同体文明論(西欧基準の未開社会論批判)
2.これまでの各研究の成果と課題の整理
まだ初歩的学習段階であり、途中経過としてみていただきたいと思います。なお、私はヒョウタンと「主語-目的語-動詞」言語族の移動、イネ科植物単一起源説などから日本列島人南方起源論を考えはじめましたが、縄文農耕やドラヴィダ語、DAN分析などはすでに先人が解明ずみであることが判りました。その上で「最少矛盾仮説」としての総合的な検討が必要と考えます。
⑴ 日本民族起源論
① 主な論者
・篠田謙一(分子人類学):『日本人になった祖先たち』等
・崎谷満(分子生物学):『DNAでたどる日本人10万年の旅』等
・斎藤成也(遺伝学者):『日本列島人の歴史』等
② 検討課題
・言語論、産業・生活文化、宗教・芸術などを合わせた日本民族起源論へ
・南方起源説と北方起源説の決着
・縄文時代終焉は「弥生時代(水辺水田稲作)」か「鉄器水利水田稲作」か
⑵ 日本語起源論
① 主な論者
・安本美典(心理学:邪馬台国研究):『日本語の起源を探る』等
② 検討課題
・西欧支配言語の「基礎語対象法」の引き写しから、被支配言語の「固有・希少語対象法」へ
・「主語―動詞-目的語」言語族の移動ルートの解明
・「東インド・東南アジア高地」のドラヴィダ語系少数民族の解明
⑶ 縄文文化・文明論
① 主な論者
・梅原猛(哲学者):『文明への問い』『近代文明はなぜ限界なのか』
・梅棹忠夫(生態学・文化人類学):『文明の生態史観』『日本語と日本文明』
・安田喜憲(地理学):『森を守る文明・支配する文明』『縄文文明の環境』『環境文明論―新たな世界史像』『水の恵みと生命文明』等
・川勝平太(経済学):『文明の海洋史観』
・中尾佐助(植物学):『現代文明ふたつの源流-照葉樹林文化・硬葉樹林文化-』
・佐藤洋一郎(植物遺伝学):『イネの文明』
② 検討課題
・西欧史観の「文明(Civilization)」の再定義
・「未開」とされた「共同体文明」の定義と解明
⑷ 縄文農耕論
① 主な論者
・中尾佐助(植物学者):『ニジェールからナイルへ 農業起源の旅』等
・佐々木高明(民族学):『畑作文化の誕生』『照葉樹林文化の道』等
・佐藤洋一郎(植物遺伝学):『イネの歴史』『縄文農耕の世界』等
② 検討課題
・「縄文農耕・土器鍋食」の農耕・言語・食文化の総合的検討
・「焼畑稲作・水辺水田稲作・水利水田稲作」の3段階起源の検討
・「イネ科・イネ単一起源説」の検討
・「東インド・東南アジア高地」対「長江流域」温帯ジャポニカ起源説の決着
⑸ 縄文宗教・芸術論
① 主な論者
・安田喜憲(地理学):『大地母神の時代-ヨーロッパからの発想』『蛇と十字架-東西の風土と宗教』『龍の文明・太陽の文明』
② 検討課題
・霊(ひ)信仰と自然信仰の整理
・霊(ひ)信仰と火神信仰、太陽信仰の整理
・霊(ひ)信仰と性器・性交信仰、海神・地(母)神・天神)信仰の整理
・天神信仰と神使崇拝、神木(神籬、御柱)信仰、置山・山車の山神信仰の整理
・霊(ひ)信仰説とアニミズム(精霊論)説・マナイムズ(精力論)説の整理
3.日本列島人起源論の論点整理
① これまでの日本列島人起源論について個別に検討してきましたが、その全体フレームを一覧にしてみました。「〇は該当、△は不確かな該当、×は非該当、空欄は不明」です。国別のDNA・言語分析は少数民族の調査は不十分と考えます。
今後の調査・研究のための仮説フレームですが、私は現時点では南方起源説です。
② 表はDNA、言語は現在段階、他は新石器時代(縄文時代)での比較です。
③ 人類学では、形態比較(骨、歯)、血液型構成、ピロリ菌、DNA分析(ミトコンドリアDNA分析・Y染色体分析・核ゲノム分析)などがありますが、分析方法は科学的としても、旧石器人・縄文人など古代人についてはサンプルがあまりにも少なく、しかも地域的偏りの制約があります。特に、多民族国の分析では、少数民族との比較対照が求められます。この「サンプル限界」(サンプルの罠)を踏まえた上で、「木を見て森をみない」ことがないよう各研究を検討・評価する必要があると考えます。
□参考□
<本>
・『スサノオ・大国主の日国(ひなこく)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)
・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)
<雑誌掲載文>
2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(『季刊 日本主義』40号)
2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号
2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(『季刊日本主義』44号)
<ブログ>
ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina
ヒナフキンの縄文ノート https://hinafkin.hatenablog.com/
帆人の古代史メモ http://blog.livedoor.jp/hohito/
邪馬台国探偵団 http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/
霊(ひ)の国の古事記論 http://hinakoku.blog100.fc2.com/