縄文ノート185 「184 乳児からみた人類進化と子育て家族形成」補足
「縄文ノート184 乳児からみた人類進化と子育て家族形成」(240124)では、2004年に書いた「動物進化を追体験する子どもの遊び」をさらに発展させ、0歳児の孫に教えられて「人類進化を追体験している乳幼児の成長」論をまとめました。
「二足歩行→手機能向上(狩猟具作成・獲物運搬)・言葉誕生(狩猟の共同作業)→頭脳肥大(肉食)」というまことしやかな「オス主導の二足歩行進化説」「狩猟・肉食進化説」が欧米だけでなく日本でもまかり通ってきていますが、乳幼児の発達を見ていると順序は違います。
「知能発達条件の確保(おっぱいの糖質・DHA増大)→知能発達(観察・理解・記憶)→真似による手機能向上(道具使用)・会話→這い這い移動(4つ足哺乳類型)→二足歩行(サル型)」の順であり、サルからヒト進化の決定的な鍵は「母親のイモ・マメ・穀類(火使用)・魚介食によるおっぱいの糖質・DHA増大」と「イモ・マメ・穀類食がもたらした自由時間増大による母子・子育てグループ・子ども同士の楽しいおしゃべり」にあると考えます。
カナン侵略・征服を神の命令として正当化するために作られたユダヤ教を原点とする欧州中心史観の「危機進化説」(気候変動による熱帯雨林の食料不足→サバンナでの死肉漁り・狩猟→二足歩行・言語)に対し、果実やイモ・マメ・穀類・魚介類・昆虫・小動物など食材の豊富な熱帯雨林における「快適快楽進化説」(美味しいもの・楽しいこと・新しいこと・探検などの追求)」の人類誕生史こそ未来への指針とすべきと考えます。たかだか2~3千年の「狩猟・闘争・戦争進歩史観」の延長上に希望を求めるべきではないのです。
今回、2点、補足したいと思います。
1.乳児の観察・認知・記憶・模倣による道具使用について
孫は9カ月目に入り、ようやく両手が連携してスムーズに動けるようになったので百均の「ソフトソード(やわらかチャンバラ、ソフトチャンバラ)」を渡してみました。
そうすると、ちゃんと両手で持って机をたたいたのでびっくり。姉・兄たちのチャンバラごっこをこの数カ月じっと観察し、理解していたことにより、真似することができたのです。
「げんこつ山の たぬきさん おっぱいのんで ねんねして だっこして おんぶして またあした」という童謡がありますが、乳児はただ「おっぱいのんで ねんねして」だけではなく、外界のいろんな出来事を観察・理解・記憶し、真似できるように準備していたのです。
手にとるものはまず舐めるので、ソフトソードを渡すと舐めるのではないかと予想していましたが、叩こうと振り回したのであり、ソフトソードの使い方を理解し、姉兄たちから学んでいたことは明らかです。
私の長女は保母さんに付きまとって話しかけるため「おしゃべり〇〇さん」と保母さんたちから言われていたのですが、長男は言葉がかなり遅かったのですが、喋り始めると長女のような幼児言葉のおしゃべりではなく、きちんとした大人言葉で話したので妻がびっくりしたとよく話しますが、しゃべれない間にも観察を続け、言葉を理解し、記憶していて準備していたのです。
早々と熱帯雨林を出た700万年前頃からの直立二足歩行のラミダス猿人などや、200万年前頃からのジャワ原人や北京原人とは異なり、熱帯雨林に長く留まりサルからヒトへの進化したホモサピエンスは「直立歩行」の身体機能進化が先行したのではなく、「観察・理解・記憶・真似」という頭脳の発達が乳幼児期から先行したのであり、それを支えたのが他の動物より糖質・DHA成分が多い母親のおっぱいであり、メスの「イモマメ穀類・魚介食」による「糖質・DHA」摂取と母子・子育てグループによる会話こそがその源だったのです。
欧州中心史観の「オス主導進化説」「二足歩行進化説」「肉食進化説」には何の根拠もなく、イモマメコメ食・魚介食民族であり、母系制社会が長く続いた日本人こそその誤りを正し、「メス子ども主導進化説」「知能発達進化説」「糖質・DHA食進化説」を世界に広めるべきと考えます。
霊長類学・文化人類学・民族学の研究者は、チンパンジーやボノボ、ゴリラの前に乳幼児の成長をじっくりと観察すべきであり、「魚べい」にでも行って寿司を食べながらなぜ日本人は魚や米などが好きなのにサルは魚や米などを食べないのか議論すべきでしょう。
2.乳児の高いエネルギー消費は頭脳発達に使われている
『日経サイエンス』は図書館で借りて読んでいるので、いつも最新号より前の号を遅れて読むことになり、やっと2023年10月号に目を通したのですが、「カロリー計算でみる人類進化」という興味深い論文がありました。
図2のように0歳児の代謝率(1日の総エネルギー消費量/徐脂肪対体重)には大きな差があるのですが、高いものは10歳ころまでの高い水準の幼児・児童と同じ水準で、20~60歳の代謝率より50%近くも大きいのです。
「赤ん坊は胎内で母親のエネルギー消費規模を反映した発達を遂げ、小さな大人として生まれてくる。しかし、1歳の誕生日を迎える頃には、体のサイズから予測される量よりも50%も多くのエネルギーを消費するようになる。子どもの細胞は大人よりもずっと活発で、成長と発達のために懸命に働いている。この仕事の一部は神経細胞の成長とシナプスの発達であることが、幼少期の脳におけるグルコース摂取量を測定した先行研究によって示唆されている」とデューク大学進化人類学のハーマン・ポンツァー教授は書いていますが、小麦粉と牛乳・卵を書きながら、シナプス発達に必要なDHAなど魚介食により得られるオメガ3脂肪酸のことには触れていません。「肉食進化説」ではないものの「酪農・養鶏を含めた農耕民進化説」であり、魚介食を無視した西欧中心史観から抜け出してはいません。
さらに厚労省のe-ヘルスネットの「加齢とエネルギー代謝」を見ると、図3のように乳幼児期の高いエネルギー消費量を示しています。
10歳ころまでの子どもは活発に体を動かすのでエネルギー消費量が大きいのは当然ですが、体を動かすことが少ない0歳児も同じなのです。
そもそも脳が消費するカロリーは人体全体の20~25%で、5~6歳では60%とされていますが、0歳児はあまり体を動かすことのない分だけ観察・理解・記憶にさらに多くのカロリ-を消費し、脳のシナプスの情報伝達機能を高めているのです。
前回、乳幼児期に脳のシナプス密度とDHA量が急増することを示す図4・図5を再掲しますが、脳のエネルギー消費量もまた乳幼児期に急増するのです。
「肉食キン肉マン進化史観」から、栄養学者や乳幼児研究者の参加による「糖質・DHA食知能進化史観」への転換が求められます。
なお、アフリカで食べられている昆虫やナマズ・カエル・トカゲ・ヘビ・ワニなどにDHAが豊富に含まれるのかどうかネットで検索しましたが、判りませんでした。どなたか、外国の文献など調べて頂けないでしょうか?
□参考□
<本>
・『スサノオ・大国主の日国(ひなのくに)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)
・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)
<雑誌掲載文>
2012夏「古事記」が指し示すスサノオ・大国主建国王朝(『季刊 日本主義』18号)
2014夏「古事記・播磨国風土記が明かす『弥生史観』の虚構」(前同26号)
2015秋「北東北縄文遺跡群にみる地母神信仰と霊信仰」(前同31号)
2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(前同40号)
2017冬「スサノオ・大国主建国論1 記紀に書かれた建国者」(『季刊山陰』38号)
2018夏「スサノオ・大国主建国論2 「八百万の神々」の時代」(『季刊山陰』39号)
2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)
2018夏「スサノオ・大国主建国論3 航海王・スサノオ」(『季刊山陰』40号)
2018秋「『龍宮』神話が示す大和政権のルーツ」(『季刊 日本主義』43号)
2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(前同44号)
2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(前同45号)
<ブログ>
ヒナフキンのスサノオ・大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina
帆人の古代史メモ http://blog.livedoor.jp/hohito/
ヒナフキンの邪馬台国ノート http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/
霊(ひ)の国の古事記論 http://hinakoku.blog100.fc2.com/