ヒナフキンの縄文ノート

スサノオ・大国主建国論から遡り、縄文人の社会、産業・生活・文化・宗教などの解明を目指します。

縄文ノート175 女偏が示す中国母系制社会

 7月19日の縄文社会研究会・東京の公開講座の講演資料「縄文は母系制社会だった~『日本中央部縄文遺跡群』の世界遺産登録を考える」では、「漢字が示す母系制社会」として、「姓、地、女・男、卑・卑弥呼、魏・鬼・倭」字を紹介しました。

 

 

 「縄文ノート90 エジプト・メソポタミア・インダス・中国文明の母系制」(210822)では次のように書きましたので、具体的な説明は省きます。「縄文ノート148 『』字からの中国母系社会論」(220827)でも詳しく分析していますので、参考いただければと思います。

 

 鬼神(祖先霊)信仰の中国人が大事にする「姓」は「女+生」であり、周王朝が姫氏であり、周の諸侯であった「魏」は「禾(稲)+女+鬼」で鬼(祖先霊)に女が禾(稲)を捧げる国であり、女王・卑弥呼(霊巫女)に金印を与えて厚遇したことをみても、もともとの中国は母系制社会であったと考えられます。―縄文ノート「31 大阪万博の『太陽の塔』『お祭り広場』と縄文」「32 縄文の『女神信仰』考」参照

 孔子の「男尊女卑」も、「尊=酋(酒樽)+寸(手)」、「卑=甶(頭蓋骨・仮面)+寸(手)」で、女は祖先霊が宿る頭蓋骨を手で支え、男はそれに酒を捧げるという役割分担を姫氏の周時代の母系制社会を理想として孔子は述べたのであり、「男は尊い、女は卑しい」というのは後世の儒家の歪曲です。

 「鬼」(祖先霊)は「甶(頭蓋骨又は仮面)+人+ム(座った私)」であり、「祖先の頭蓋骨を捧げた人」「仮面をかぶった人」を私が拝むという鬼神信仰、卑巫女(霊巫女)の役割を示しており、「魂」字は「雲+鬼」で「天上の鬼(祖先霊)」であり、「卑」字は「甶(頭蓋骨)+寸(手)」で祖先霊を掲げて祀る女性の巫女(みこ=御子)を表しており、いずれも祖先霊信仰を示しています。

 「卑」を卑しいという意味に変えたのは、春秋・戦国時代に戦勝国が女性を性奴隷にするようになり、男性優位社会となったのに儒家が合わせたことによるものです。

 

 この資料作りの際には、次の基本字「始」字、結婚や出産に関わる「婚・婿・嫁・妊・娠」字、漢委奴国王の金印の「委・奴」字について分析が間に合わなかったので、ここに追加して合わせて表1として紹介したいと思います。

 

 

 まず「始」字を漢字分解すると「女+台」であることは象徴的です。アニメ「はじめ人間ギャートルズ」の表現を借りると、「はじめ人間ウーマンズ」にならざるをえません。

 結婚や出産に関わる「婚・婿・嫁・妊・娠」字もすべて女偏です。「姓=女+生」に対応して、結婚の「婚=女+氏/日」であり、「嫁=女+家」に対して「婿=女+疋(足)/月」であり「1カ月の足入れ婚で合格すると婿として認められる」という風習があった可能性があります。

 「妊娠」が女偏なのは当然ですが、「娠=女+辰」で「辰」には皇帝を象徴する龍の意味があり、「北辰=北極星=皇居、天子を指す」ことなどからみて、最高の貴字であることは見逃せません。

 また「匈奴(ヒュンナ)」や「委奴国(筆者説:ふぃな(いな、ひな)の国)」の「奴」字は、奴隷・奴婢になどから「奴」字を「女を右手でとらえる」との悪字(卑字)解釈が見られますが、元々の「奴」字は「」であり「女を右手で支える」という良字(貴字)なのです。―縄文ノート「149 『委奴国』をどう読むか?」(220905)」、「152 朝鮮ルート、黒潮ルートか、シベリアルート、長江ルートか?」(220918)参照

 以上から明らかなように、中国では春秋戦国時代の男が中心の軍国社会に入る前の孔子が理想とした周の農耕社会(男=田/力)は母系制社会であり、女偏の漢字は母系制社会の人々の考え方を示しています。

 若い中国語学者のさらなる研究を期待したいところです。

 

□参考□

<本>

 ・『スサノオ大国主の日国(ひなのくに)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)

 ・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)

 ・『奥の奥読み奥の細道』(アマゾンキンドル本)

<雑誌掲載文>

 2012夏「古事記」が指し示すスサノオ大国主建国王朝(『季刊 日本主義』18号)

 2014夏「古事記播磨国風土記が明かす『弥生史観』の虚構」(前同26号)

 2015秋「北東北縄文遺跡群にみる地母神信仰と霊信仰」(前同31号)

 2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(前同40号)

 2017冬「スサノオ大国主建国論1 記紀に書かれた建国者」(『季刊山陰』38号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論2 「八百万の神々」の時代」(『季刊山陰』39号)

 2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)

 2018夏「スサノオ大国主建国論3 航海王・スサノオ」(『季刊山陰』40号)

 2018秋「『龍宮』神話が示す大和政権のルーツ」(『季刊 日本主義』43号)

 2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(前同44号)

 2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(前同45号)

<ブログ>

  ヒナフキンスサノオ大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina

  帆人の古代史メモ          http://blog.livedoor.jp/hohito/

  ヒナフキン邪馬台国ノート      http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

  霊(ひ)の国の古事記論       http://hinakoku.blog100.fc2.com/