ヒナフキンの縄文ノート

スサノオ・大国主建国論から遡り、縄文人の社会、産業・生活・文化・宗教などの解明を目指します。

192 ピラミッドは神山天神信仰の人工神山

 大学に入った1964年の「ミロのビーナス展」、翌年の「ツタンカーメン展」と異常なほどの大人気でしたが、その後、いつ頃か「ピラミッド・パワー」が流行り、さらに「世界不思議発見」でもピラミッドや古代エジプトがよく取り上げられていた印象ですが、今、なぜかテレビでは第何次かのピラミッド・ブームのようです。
 全部は見ていないのですが、最近、気になり始めて録画しているものだけでも次のようなものがあり、実際にはもっとあったのではと思います。
<最近の録画した主なピラミッド番組>
  12月14日 TBS:ピラミッドの真実!5000年の封印を破る鍵は太陽の船と科学とツタンカーメン
  12月30日 NHK:古代文明ミステリー たけしの新・世界七不思議 「クフ王のピラミッドで世紀の大発見!」
 3月16日 TBS:世界不思議発見!「ピラミッド・スフィンクスツタンカーメン 古代イプと三大ミステリースペシャル」
  3月30日 NHK:地球ドラマチック 古代エジプトの巨大墳墓
  3月31日 NHK:ピラミッド透視とファラオの謎
  4月10日 NHK:古代王国バラエティー なんだフル!? 「ピラミッドとミステリーサークル」
  4月29日 朝日:クレージージャーニー☆歴史の教科書が変わるお宝探し!「エジプト考古学者・吉村作治
 5月5日再 NHK:究極ガイド 2時間でまわるピラミッド』きめ細かな配慮(2023年5月27日)

 

 吉村作治早大名誉教授のクフ王のピラミッド横から「第2の太陽の船」を発掘した実績や、宇宙線ミューオンによる透視技術によりクフ王のピラミッドに未発見の空間があることが明らかになり、吉村さんのマスコミへの働きかけなどが大きなきっかけと考えられますが、私もまたクフ王の墓の発見には大いに期待しているところです。
 昨年の12月14日のTBSの「ピラミッドの真実!5000年の封印を破る鍵は太陽の船と科学とツタンカーメン」を見て、私は「縄文ノート158 ピラミッド人工神山説:吉村作治氏のピラミッド太陽塔説批判」(230118)を書き、「果敢にエジプトで発掘を続けた吉村作治早大名誉教授は昔から大好きな学者ですが、氏のピラミッド説には『半分賛成、半分批判』」と書きました。
 賛成なのは「ピラミッドは王の墓ではない」「ナイル川中流の『王家の谷』は、ピラミッドに近いような富士山型の山があり、人工のピラミッドを作る力がなくなった王家が集団墓地として選んだ」という点であり、批判点は「ピラミッドが太陽のエネルギーを集め、周辺の墓を守る役割をしていた」という太陽信仰説、ピラミッドパワー説です。

 私は白いクフ王のピラミッドや上が白く下が赤いメンカウラ―王(クフ等の孫)のピラミッドは「母なるナイル」の源流域の万年雪を抱く「月の山」ルウェンゾリ山や「神の山」ケニヤ山、「神の家」キリマンジャロを模した人工の山と考えていたからです。


<縄文ノート56 ピラミッドと神名火山(神那霊山)信仰のルーツ(210213)>

 2017年3月11日のTBS「世界ふしぎ発見! ~世界初!ついに解明か!?ピラミッド王朝の秘密~」の河江肖剰氏の解説では、最大のクフ王のピラミッドは「白いピラミッド」で、カフラー・メンカフラーのピラミッドは上は石灰岩の白、下は花崗岩御影石)の赤であったことが報道されていました。なかでもメンカウラーのピラミッドには、3分の1位の高さ辺りまで、赤色だったとされています。
 この上が白、下が赤の配色は山頂に雪を頂く山を模したものであり、クフ王のピラミッドが4500年前頃に築かれたことからみて、7500~5000年前頃の寒冷期に近い頃に全山が雪に覆われた白い山を模したものであることが明らかです。そして、カフラー王、メンカウラ―王と下部が赤色になるのは温暖化により山裾に地肌の赤色が増えてきたことを示しています。

 

 「太陽の船」2艘がクフ王のピラミッドの横に埋められていたことは、死体から遊離したクフ王と妻の霊(ひ=魂)はピラミッドから「太陽の船」に乗って天の上り、ピラミッドを建設した人々の霊(ひ)もまたその「太陽の船」に乗って天に昇ると考えられていたからに外ならず、ピラミッド内の「王の間」「女王の間」とされている部屋は、ピラミッドから天に向かう際の出発ロビーと考えられていたのではないか、と私は考えています。

 今回、連休に4月10日の「NHK:古代王国バラエティー なんだフル!? ピラミッドとミステリーサークル」を見ましたが、吉村さんはピラミッドが王の墓ではないことを再度、詳しく解説しています(NHKオンデマンドで見ることが可能)。この主張は正しく、全く異議はありません。

 ただ、「ピラミッド・パワー塔」から「ピラミッドが寺院の五重塔のような宗教施設」との説に変えている点は、「半分賛成、半分異議あり」です。

 わが国には天皇家が仏教を国教とする以前に、スサノオ大国主一族の全ての死者の霊(ひ)を祀る「八百万神信仰」があり、死者の霊(ひ)は神名火山(神那霊山)や神籬(霊洩木)、神社や住宅の心御柱(心柱:大黒柱=大国柱)から天に昇り、降りてくるという宗教思想が縄文時代からあり、ピラミッド=神名火山(神那霊山)説をまず考えるべきではないでしょうか?
 4600年前頃のクフ王のピラミッドより古い4700~3600年前頃の長野県原村の阿久遺跡の環状列石の中心部の立石からの2列の石列はコニーデ火山の蓼科山を向いており、隣りのさらに古い6000~5500年前頃の茅野市の阿久尻遺跡の巨木方形柱列の建物もまた蓼科山を向いています。この縄文時代からの神名火山(神那霊山)信仰は紀元1・2世紀に百余国を統合したスサノオ大国主葦原中国(あしはらのなかつくに:筆者説「委奴国:ふぃなのくに」)に引き継がれ、現代に続いているのです。
 

 この阿久・阿久尻遺跡にみられる神山天神信仰はエジプトだけでなく、全世界の古代文明に共通しており、ピラミッドはこの神山を人工の神山として築いたのです。
 そして重要な点は、この神山天神信仰はアフリカ東部湖水地方の母なるナイルの源流域にある万年雪を抱くく「月の山」ルウェンゾリ山・「神の山」ケニヤ山・「神の家」キリマンジャロをルーツとしているのです。エジプト文明に水と肥沃な土壌をもたらした「母なるナイル」はこれらの神山を水源としているだけでなく、彼らの祖先霊が宿る神山から流れ下っていたのです。
 古代の全世界の神山天神信仰と神山を模したピラミッドは「東アフリカ湖水地方の神山天神信仰」をルーツとしていたのです。縄文文化・文明研究から「神山天神信仰・ピラミッド東アフリカ湖水地方起源説」を世界に向けて明らかにすべきと考えます。

 アフリカ西部熱帯雨林で別れたY染色体D型人は東部湖水地方から熱帯の海岸にそって日本列島に進んで縄文文明を育み、Y染色体E型人はナイル川を下りエジプト文明を築いたのです。

 神山天神信仰やピラミッドをエジプトだけで論じ、神名火山(神那霊山)信仰を日本列島だけで論じるのではなく、人類史として分析すべきと考えます。そして、阿久・阿久尻遺跡を中心とした日本中央部縄文遺跡群の世界遺産登録を目指すべきと考えます。
 なお吉村さんの素晴らしいところは、クフ王の墓をクフ王のピラミッドの西側にあるのではないとの仮説を立て、エジプト政府の許可をとり、資金を集めて調査を開始していることです。

 私は魏書東夷伝倭人条の行程(正使陸行・副使水行)と記紀に書かれた「筑紫日向(ちくしのひな)」などの高天原地名から「卑弥呼墓」の位置を福岡県甘木高台(高天原)の3か所の候補地に想定し、『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)を書きながら、まだ動けていません。
 また、スサノオ王の墓の場所は未解明なものの、大国主王の墓は文献と遺跡からほぼ絞り込むことができていますが、まだ現地調査で確かめることもできていません。
 日本の子どもたちの中から、いずれシュリーマン吉村作治さんのような考古学者を目指す人がでてくることを期待したいと思います。

 

<参考資料>
 これまで神名火山(神那霊山)信仰については、次の小論で触れてきています。
⑴ 霊(ひ)信仰 
 縄文ノート9 祖先霊信仰(金精・山神・地母神信仰)と神使文化を世界遺産に 200302
 縄文ノート15 自然崇拝、アニミズム、マナイズム、霊(ひ)信仰 190129・0307→200411
 縄文ノート34 霊(ひ)継ぎ宗教(金精・山神・地母神・神使文化)について 150630→201227
 縄文ノート37 「神」についての考察 200913→210105
 縄文ノート38 「霊(ひ)」とタミル語peeとタイのピー信仰 201026→210108
 縄文ノート74 縄文宗教論:自然信仰と霊(ひ)信仰 210518
 縄文ノート128 チベットの「ピャー」信仰 220323
 縄文ノート132 ピュー人(ミャンマー)とピー・ヒ信仰 220404
 縄文ノート169 東西ストーンサークル文明:「ストーンヘンジ」と「阿久(あきゅう)・阿久尻(あきゅうじり)遺跡」 230524
 縄文ノート173 「原始、女は太陽」か、「原始、女は霊(ひ)を産む神」か 230714
⑵ 神山天神信仰
 縄文ノート35 蓼科山を神名火山(神那霊山)とする天神信仰について 200808→1228
 縄文ノート40 信州の神名火山(神那霊山)と「霊(ひ)」信仰 201029→210110
 縄文ノート44 神名火山(神那霊山)信仰と黒曜石 201014→210120
 縄文ノート56 ピラミッドと神名火山(神那霊山)信仰のルーツ」(210213
 縄文ノート57  4大文明と神山信仰  210219
 縄文ノート61 世界の神山信仰 210312
 縄文ノート71 古代奴隷制社会論 210429 
 縄文ノート96 女神調査報告1 金生遺跡・阿久遺跡
 縄文ノート99 女神調査報告3 女神山(蓼科山)と池ノ平御座岩遺跡 210930
 縄文ノート101 女神調査報告5 穂高神社の神山信仰と神使 211008
 縄文ノート118 「白山・白神・天白・おしら様」信仰考 220111
 縄文ノート158  ピラミッド人工神山説:吉村作治氏のピラミッド太陽塔説批判 230118
⑶ 神木・神塔信仰
 縄文ノート31 大阪万博の「太陽の塔」「お祭り広場」と縄文 191004→201223
 縄文ノート33 「神籬(ひもろぎ)・神殿・神塔・楼観」考 200801→1226
 縄文ノート50 縄文6本・8本巨木柱建築から上古出雲大社へ 200207→210203
 縄文ノート104 日本最古の祭祀施設―阿久立棒・石列と中ツ原楼観拝殿 211025
 縄文ノート105 世界最古の阿久尻遺跡の方形巨木柱列群 211030
⑷ 龍神・雷神・水神・神使信仰
 縄文ノート30 「ポンガ」からの「縄文土器縁飾り」再考 201220→1221
 縄文ノート36 火焔型土器から「龍紋土器」 へ 200903→1231
 縄文ノート39 「トカゲ蛇神楽」が示す龍蛇神信仰とヤマタノオロチ王の正体 201020→210109