ヒナフキンの縄文ノート

スサノオ・大国主建国論から遡り、縄文人の社会、産業・生活・文化・宗教などの解明を目指します。

縄文ノート90 エジプト・メソポタミア・インダス・中国文明の母系制

 「縄文ノート86 古代オリンピックギリシア神話が示す地母神信仰」を書いた時、ギリシア文明に先立つエジプト・メソポタミア・インダス・中国文明の母系制についてもメモを作成していたのですが、「縄文ノート90 母系(母権)制社会からの人類進化」を書き始めて、先にまとめて書いておく必要がでてきました。

 なお、これまで私は共同体・家族形成の主導や、氏族・部族社会での妻問夫招婚や祖先霊信仰、氏族・部族・民族国家形成などについて、「母系制社会」に「母権制社会」を含めて書いて来ましたが、両者をきちんと整理する必要を感じています。現時点では未検討のまま「母系制社会」と書き、次回に時間をかけて検討したいと考えます。

 

1 母系制社会についての検討方法

 古代文明が母系制か父系制かについての検討は、次のような4つの方法が考えられます。なお、日本神話や縄文社会の分析を除き、世界各国の神話などの分析はウィキペディアなどの2次資料をもとにしたものです。

⑴ サル・類人猿の共同体・家族形成からの推定方法

 人類誕生時の社会をサル・類人猿の共同体・家族形成の主導権から推定する方法で、縄文ノートの「81 おっぱいからの森林農耕論」「84 戦争文明か和平文明か」「85 『二足歩行』を始めたのはオスかメス・子ザルか」「87 人類進化図の5つの間違い」「89 1段階進化説から3段階進化説へ」などで考察しています。

 

⑵ 遺跡・遺物からの推定方法

 男女の埋葬方法、環状列石、石棒・円形石組、女性像(石像・土偶)・女神像、アクセサリーの埋葬品などから推定する方法で、縄文ノートの「21 八ヶ岳縄文遺跡見学メモ」「23 2020八ヶ岳合宿報告」「32 縄文の『女神信仰』考」「75 世界のビーナス像と女神像」などで考察しています。

 

⑶ 古代神話など文献からの推定方法

 創世神話や始祖神神話から推定する方法で、縄文ノートの「71 古代奴隷制社会論」「72 共同体文明論」「86 古代オリンピックギリシア神話が示す地母神信仰」などで考察しています。

 わが国の場合、世界史の中でも特異な例として、3世紀に卑弥呼(霊巫女)を女王とする邪馬壹国があったことが魏書東夷伝倭人条に記され、さらに記紀には九州や紀伊など各地に女王国があり天皇家によって滅ぼされたとされており、女系(女権)制が最後まで続いた国であり、女系神話と男系神話が入り混じった日本神話の分析は世界の神話解釈の手掛かりを与えます。

 なお、日本神話ではスサノオ大国主建国を表面から隠した天皇家の記録から真実の歴史を解明する作業は大変ですが、当時の人々の宗教・社会思想を読み解くことは比較的容易です。75年前まで他民族の支配を受けなかった島国の日本神話とは異なり、交易・交流・征服などにより複雑に各氏族・部族・民族の神話が習合した4大文明の神話から、当時の人々の宗教・社会思想を読み解く作業は大変ですが、日本神話から類推することができます。

 また、古事記スサノオとアマテルの「宇気比(筆者:受け霊)」を「誓い」とするなど、訳本や解説本などには歪曲や錯誤があり、本来は原本にあたる必要があるのですが、ここでの分析は3次資料以下のものであり、本格的には言語研究者の分析に期待したいと思います。

 

⑷ 現代の民俗・文化からの推定方法

 日本各地の祖先霊が宿る神山(神名火山:神那霊山)信仰や、山の神(女神)に男が男根型の木棒・食べものを捧げる金精信仰、平安時代からの男の礼装の烏帽子(えぼし)の先に雛尖(ひなさき:陰核=クリトリス)を付けていること、夫が危険な漁や航海に出る漁民の家では妻が家を任されているなど、現代の民俗・文化から古代に遡って推定する方法で、縄文ノートの「34 霊(ひ)継ぎ信仰(金精・山神・地母神・神使文化)について」「35 蓼科山を神名火山(神那霊山)とする天神信仰」「縄文40 信州の神那霊山(神名火山)と『霊(ひ)』信仰」「73 烏帽子(えぼし)と雛尖(ひなさき)」「80 『ワッショイ』と山車と女神信仰と『雨・雨乞いの神』」などで考察しています。

 

2 メソポタミア文明の母系制

 古代メソポタミア社会の解明には、5000年頃には成立していた世界最古の神話の” 楔形文字”によるメソポタミア神話(シュメール神話・アッカド神話・バビロニア神話)が重要な手掛かりとなります。

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 特に、女神イシュタル信仰は表1に示すように、中東から地中海の諸国の女神信仰へと広がり、「イシュタル信仰は後代まで続き、ギリシアアフロディーテ、ローマのウェヌスに姿を変えて崇拝され続けたが、そのあまりに強大な信仰は一神教ユダヤ教キリスト教から敵視され、果てには『バビロンの大淫婦』と罵られることとなった」と女性蔑視の蔑称の烙印が押されていますが、それだけにかえって根強い女神信仰があったことを示しています。

 メソポタミア神話の最古のシュメール神話は、「海の女神」ナンム(Nammu)が天地を生み、全ての神々を生んだ母なる祖先と称され、蛇の頭を持つ蛇女神として表現され、天と地が結合している「天地の山」アン(アヌ)と「大地・死後の世界を司る女神」を生んだとされます。アヌもしくは月神シンと「ヨシの女神」ニンガルの娘のイシュタルは「金星・愛欲・戦争」の女神で、キシュ、アッカド、バビロン、ニネヴェ、アルベラなど多くの崇拝地を持ち、双子の兄に「太陽神」ウトゥ(シャマシュ、姉に冥界を支配する「死の女神」エレシュキガルがいます。

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 「シュメール人は世界を閉じたドーム状で、その外には原初の海が広がっていると考えていた。ドームの基礎をなす地表の下には地下世界とアプスーと呼ばれる淡水の海が広がっていると考えていた。ドーム状の空を司る神はアン、地上の神はと呼ばれた。原初の海はナンムと呼ばれた」とされ、このナンム信仰は数千年に渡って続けられ、ハンムラビ法典より古い世界最古の法典ウル・ナンム法典を定めた4100年前頃のウル第3王朝の初代王ウル・ナンムは彼女から名前を取って、自らを「女神ナンムの召使」と称したとされます。

 重要な点は、始祖神ナンムが「海の女神」で「蛇女神」という点であり、狩猟民や農耕民の神ではなく、海から産まれ海に帰る海人族の神話であるという点です。この神話はシュメール人が「原初の海」インド洋からアラビア海ペルシャ湾、チグリスユーフラテス川へと遡ってやってきたことを示しており、ナンムの孫娘のイナンナ(イシュタル)が背中に翼の生えた天の女主で龍のように速く飛び、南風に乗りアプスー(地底の淡水の海)から聖なる力をえた」というのは、夏のモンスーンの南風に乗ってアフリカから翼のような帆の竹筏でやってきた歴史を伝えていると考えます。

 アンとキが兄妹神でありながら夫婦になる兄妹婚神話はギリシア神話のゼウスとヘーラーの兄妹婚にも見られ、私は母系神に妻問夫招婚した男神を血族として書き換えたことによるものと考えています。―「縄文ノート86 古代オリンピックギリシア神話が示す地母神信仰」参照

 また「大地の女神」キシャル、「大地の女神」、エンリルの妻の「穀物神」ニンリル・アシュナン、「豊穣神」ニントゥなどの「地母神穀物神・豊穣神神話」は、農耕の開始が穀類を採集していた女性によって開始された可能性が高いことを示しています。―縄文ノート「81 おっぱいからの森林農耕論」「85 『二足歩行』を始めたのはオスかメス・子ザルか」「89 1段階進化説から3段階進化説へ」参照

 日本神話ではイヤナミ(伊邪那美、伊耶那美)は死後に「黄泉国(よみのくに:筆者説は夜海国。子宮の羊水から黄色い泉の漢字が当てられた)」に行ったとされていますが、メソポタミア神話の「海の女神」ナンムの海人族神話と符合します。―「縄文ノート31 大阪万博の『太陽の塔』『お祭り広場』と縄文」参照  

 信州の縄文時代の「巳を載く神子」「蛇体把手土器」や新潟の火焔型土器(筆者説は龍蛇土器)、出雲大社神使の海蛇、大神神社神使の蛇、イヤナミの子のスサノオ大物主大神)やその子の大物主(大年から代々襲名)は夜這いして鍵穴から三諸山(三輪山)に帰った蛇とする神話など、「蛇神」信仰という点においてもメソポタミア神話と符合しています。―縄文ノート「23 2020八ヶ岳合宿報告」「39 『トカゲ蛇神楽』が示す龍蛇神信仰とヤマタノオロチ王の正体」参照

 さらに天地と全ての神々を生んだ母なるナンムの子のアン(アヌ)が天と地が結合している「天地の山」とされていることは、「クル(山)信仰」が起源の神が訪れる人工の山「ジグラット」はアン(アヌ)を形にしたものと考えられます。アン(アヌ)の子のシン(ナンナ・ナンナル)が「月神、大地・大気神、暦神」として、ジグラットの上の神殿に祀られていることをみても、「ジグラット=アン(アヌ)説」を裏付けます。

―縄文ノート「56 ピラミッドと神名火山(神那霊山)信仰のルーツ」「57 4大文明論と神山信仰」「61 世界の神山信仰」参照

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 4万年前頃にアフリカのY染色体E型のコンゴロイドと分岐したY染色体E型の縄文人は、インド洋沿岸を東進したことが確実であり、メソポタミア神話と日本神話がそれぞれ別に派生したのか、それとも共通のルーツを持つのか、神山信仰や黒曜石文化などと合わせてさらに検討が求められます。―縄文ノート「43 DNA分析からの日本列島人起源論」「縄文44 神名火山(神那霊山)信仰と黒曜石」参照

 

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 この豊かなメソポタミア文明の地・イラクは、イスラム帝国アレクサンドロス大王ギリシアモンゴル帝国オスマン帝国、イギリス帝国などに次々と支配され、イラク戦争ではアメリカの空爆にさらされ、イスラム原理主義者のイスラム国(IS)による大規模な遺跡・遺物破壊が行われるなど、神話時代の民俗・文化、とりわけイスラム教により女神信仰は失われ、痕跡を残していないと思われます。一方、アジア東端の島国の日本列島では現代に入ってアメリカの占領・支配を受けるまでは他民族の支配を受けることがなく、神話時代の民俗・文化を色濃く現代に残していますから、日本神話・民俗・文化を手掛かりにすればメソポタミア神話の解明が可能となると考えます。若い人たちが取り組んで欲しいものです。

 

2 エジプト文明の母系制

 私が最初にエジプトに関心を持ったのは、京都で大学に入った1964年の「ミロのヴィーナス展」に続き、翌1965年に100万人を超える入場者があったツタンカーメン展を見た時です。多くの方も、日本人にとって重要なメソポタミア神話より、エジプト神話やギリシア神話の方が馴染みが深いのではないでしょうか。

 エジプト神話は「水の神」ヌンの誕生から始まり、「ヘリオポリス九柱神」の創造神アトゥム、大気の神シュウ、湿気の女神テフヌト、大地の神ゲブ、天空の女神ヌト、植物の神(冥界の神)オシリス豊穣の女神イシス、戦争の神セト、葬祭の女神ネフティスがあり、太陽神ラー、天空の神ホルス、知恵の神トトらが入れ替わる伝承もあるとされますが、私が知っていたのはラーだけでしたから、その知識は限られています。

 創世神ヌン(Nun)は「原初の水」と呼ばれてあらゆる存在の起源とされ、その子の創造神アトゥム(Atum)の立つ大地「原初の丘」も指すとされています。アトゥムは原初の水「ヌン」より「蛇」の姿をして誕生し、独力で大気の神シューや湿気の女神テフヌトなどの神々を生み出した両性具有の神とされています。

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 発音から見て前述のシュメール神話の天地を生み、全ての神々を生んだ母なる祖先で、蛇の頭を持つ「原初の海の女神」ナンムと同一神のように思えますが、ナンムが「原初の海」に対しヌンは「原初の水」、ナンムが女神であるのにヌンは男神、ナンムが蛇神であるのに対してヌンの子のアトゥムが蛇神という違いがあります。

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 なお、日本神話では「荒唐無稽な神話部分は真実を巧妙に後世に伝える暗号」であることからみて、「ヌンは子のアトゥムの立つ大地・原初の丘」「アトゥムはマスタベーションで大気の神シューや湿気の女神テフヌトなどの神々を生み出した」という部分は、ヌンが地母神であり、創造神アトゥムもまたシュメール神話の「大地の女神」キに相当する地母神で、後世に男神に置き換えられた可能性が高いと考えます。

 

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 エジプト神話の女神としては、湿気の女神テフヌト、身体で天を覆う天の女神ヌト、その子の豊穣の女神イシスと葬祭の女神ネフティス、太陽神ラーの娘の愛と美の女神ハトホルなどがありますが、イシスが兄のオシリスと結婚して天空の神ホルスを産み、息子ホルスを夫としたという神話や、ハトホルが父のラーを夫とし、大地の神ゲプが妹の天の女神ヌトを妻としたという神話は、ギリシア神話の兄妹婚・親子婚神話と同様に、母系制神話の神々に父系制神話の神々が血族として習合されたことを示しています。

 古代エジプトの王・ファラオは全て「生きるホルス」と考えられており、その母の豊穣の女神イシスは王座の形をした頭飾りや日輪と雌牛の角を頭に乗せた姿であり、ナイル上流ヌビアのアスワンのフィラエ島にイシス神殿(世界遺産ヌビア遺跡群)が造られるなど、古代エジプトで最も崇拝された女神とされています。

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 アフリカ高地湖水地方では女性がイモや穀類を採集し、男性は漁撈・狩猟に従事し、ナイル川を下った上流のアスワンの地で女性が中心となってイモや穀類の農耕を開始し、豊穣の女神イシスを祀ったと考えられ、さらにナイル川下流では舟に乗った男神が交易や戦争によって富を蓄え、祭祀・軍事・行政支配権を握るようになると男神信仰、さらに後世には太陽神信仰に変わったと考えられます。

 

4 インダス文明の母系制

 ナショナルジオグラフィック・ニュース2013.04.30は「インダス文明で新発見、女性優位と暴力」という興味深い記事を紹介しています。

 「アメリカ、ウィスコンシン大学マディソン校のマーク・ケノイヤー(Mark Kenoyer)氏を中心とする研究グループは、インダス文明の中心都市の1つ、ハラッパーを調査対象に定めた。当時、約8万人の人口を抱えるインダス文明最大かつ最強の都市で、紀元前2550年から2030年頃の墓地遺跡から人骨を発掘、歯の化学組成を分析した。埋葬者の多くが他の土地で育った人々で、各地から来た複数の民族が混在する都市の様子が明らかになった」「インダス地方は広範囲におよび、各地から商売などを目的に多数の人々が訪れた可能性は高い。外来者の多くは男性で、中には伴侶を求める人もいたらしく、ハラッパーの先住民女性の隣に埋葬されている例も多いという。調査は予備段階にすぎないが、妻の家への婿入りを示唆するには十分な結果である。南アジアでは古来から妻が夫の家に嫁ぐ風習が一般的だが、女系優位の社会制度が存在した可能性があるとケノイヤー氏は話す」というのです。

 

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 さらに『世界の歴史1』(教養文庫821:社会思想社)では、「女は腰巻ようのものを身につけ、上に帯をし、頭には扇形の布製の飾りをつけていた。彼女たちはなかなかおしゃれで、いろいろな化粧をしていた。炭酸鉛のおしろい、墨、青銅製の柄つき鏡、象牙製の櫛(くし)、ピンなどが出土しているので明らかである。水晶、めのう、トルコ石、アマゾン石などの宝石や、金、銀、銅、青銅、ガラスなどを使って、首飾り、胸飾り、腕輪、足輪、耳飾り、鼻環(はなわ)などのアクセサリー類をたくさんつくって使用していたことは、出土品から知られる。それらの宝石類はたいせつにされ、金属製の宝石箱にいれ、床の敷き煉瓦の下などにかくしてあったものが、発見されている」と紹介されており、魏皇帝が女王・卑弥呼に贈った鏡や絹織物や化粧用の朱丹などと照らし合わせてみても、これらの遺物は女権国家であったことを示しています。 インダス文明を担ったドラヴィダ族は、メソポタミアペルシア湾地域と活発に交易を行っていた海人族であり、航海で命をおとす可能性のあった男たちは、日本の海人族(漁師や交易民)や中世・近世の武士たちのように妻に家を任せていた可能性が高く、それは専業主婦に家計や子どもの教育などを任せてきたサラリーマン文化に引き継がれています。

 

5 中国文明の母系制

 中国神話では、人類創成の神は伏羲(ふぎ)と女媧(じょか)の兄妹とされ、姓は「風」で蛇身人首の姿で描かれることがあり、大洪水が起きたときに二人だけが生き延びて夫婦となり、それが人類の始祖となったとして中国大陸に広く残されているとされています。

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 この伏羲・女媧神話は中国少数民族のミャオ(苗)族が信奉した神と推測されており、雷公が洪水を起こした時、兄妹は雷公を助けた時にもらった種を植え、そこから生えた巨大なヒョウタンの中に避難して助かり、結婚して人類を伝えたとされています。西アフリカのニジェール川原産のヒョウタンが登場し、メソポタミアの洪水伝説や蛇神神話、兄妹婚と同じであることが注目されます。

 Y染色体D型は日本人41~47%(アイヌ88%)で、チベット人43~52%、アンダマン諸島人73%などに近いことからみて、アフリカのニジェール川コンゴ川流域に住むY染色体E型のコンコイド(ナイジェリア・コンゴなど)と分かれたD型の縄文人メソポタミア・エジプトの蛇神伝説や兄妹婚やメソポタミアの洪水伝説をその移動ルートに隣接して住むミャオ(苗)族に伝え、中国の始祖伝説となった可能性が高いと考えます。

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 ちなみに、Y染色体D型はミャオ(苗)族3.6%、タイ人・ベトナム人2.9%、スマトラ1.8%、台湾原住民・フィリピン人0%、華南人2.1%、蒙古人1.5%、朝鮮民族2.3%などであり、「海の道」ルートと「マンモスルート」を通って日本列島にやってきたと考えられます。―縄文ノート「43 DNA分析からの日本列島人起源論」「62 日本列島人のルーツは『アフリカ湖水地方』」参照

 鬼神(祖先霊)信仰の中国人が大事にする「姓」は「女+生」であり、周王朝が姫氏であり、周の諸侯であった「魏」は「禾(稲)+女+鬼」で鬼(祖先霊)に女が禾(稲)を捧げる国であり、女王・卑弥呼(霊巫女)に金印を与えて厚遇したことをみても、もともとの中国は母系制社会であったと考えられます。―縄文ノート「31 大阪万博の『太陽の塔』『お祭り広場』と縄文」「32 縄文の『女神信仰』考」参照

 孔子の「男尊女卑」も、「尊=酋(酒樽)+寸(手)」、「卑=甶(頭蓋骨・仮面)+寸(手)」で、女は祖先霊が宿る頭蓋骨を手で支え、男はそれに酒を捧げるという役割分担を姫氏の周時代の母系制社会を理想として孔子は述べたのであり、「男は尊い、女は卑しい」というのは後世の儒家の歪曲です。

 

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 「鬼」(祖先霊)は「甶(頭蓋骨又は仮面)+人+ム(座った私)」であり、「祖先の頭蓋骨を捧げた人」「仮面をかぶった人」を私が拝むという鬼神信仰、卑巫女(霊巫女)の役割を示しており、「魂」字は「雲+鬼」で「天上の鬼(祖先霊)」であり、「卑」字は「甶(頭蓋骨)+寸(手)」で祖先霊を掲げて祀る女性の巫女(みこ=御子)を表しており、いずれも祖先霊信仰を示しています。

 「卑」を卑しいという意味に変えたのは、春秋・戦国時代に戦勝国が女性を性奴隷にするようになり、男性優位社会となったのに儒家が合わせたことによるものです。

 

6 まとめ

 以上の分析結果をまとめると表3のようになります。

 アフリカ高地湖水地方からのナイル川・地中海とインド洋・太平洋への人類の拡散を考えると、同時に社会・民俗・文化についても同じルートで拡散したと考えます。

 

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 私は人類拡散にともない、「主語-目的語-動詞」言語、ヒョウタンやイネ科穀類、神山天神信仰(神名火山信仰)、女神信仰、蛇神・龍神信仰、黒曜石利用、円形住宅・墓地、筏が伝播したことを明らかにしてきましたが、母系制社会とそれに伴う神話もまたアフリカでの人類誕生を起源として世界に広まったのです。これまでの主な小論は次の表4のとおりです。

 

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□参考□

<本>

 ・『スサノオ大国主の日国(ひなこく)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)

 ・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)

<雑誌掲載文>

 2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(『季刊 日本主義』40号)

 2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)

 2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(『季刊日本主義』44号)

 2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(『季刊 日本主義』45号)

<ブログ>

  ヒナフキンスサノオ大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina

  ヒナフキンの縄文ノート https://hinafkin.hatenablog.com/

  帆人の古代史メモ    http://blog.livedoor.jp/hohito/

  邪馬台国探偵団         http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

  霊(ひ)の国の古事記論 http://hinakoku.blog100.fc2.com/