ヒナフキンの縄文ノート

スサノオ・大国主建国論から遡り、縄文人の社会、産業・生活・文化・宗教などの解明を目指します。

縄文ノート89 1段階進化説から3段階進化説へ

 人類の進化については、これまで寒冷化により熱帯雨林が減少して果物が乏しくなり、サバンナに降りて肉食(死肉あさりから狩猟へ)に代わり、脳機能が向上するとともに二足歩行と棍棒・槍の使用により手機能が向上し、獲物をメスに運ぶことによりさらに二足歩行と手機能向上が促進され、家族が形成されるとともに、狩りを通してオスの共同性と採集のメスとの分業ができてコミュニケーション・言語能力が高まった、というような「オス主導」の「1段階進化説」「直線進化説」でした。

 これに対して、私は妻問夫招婚の霊(ひ)・霊継(ひつぎ)信仰のスサノオ大国主建国から遡り、旧石器・縄文時代地母神信仰論、日本列島人起源論や農耕起源論、さらには人類進化論へと進んで検討してきた結果、人類の進化は熱帯雨林でメスと子ザルが主導し、乳幼児期、子ども期、成人期の3段階で進んだと考えるに至っています。

 ここで統一的に整理しておきたいと思います。

 

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1 進化論の経過

 これまで各テーマで、進化について書いてきた主なものをまとめると次のとおりです。 f:id:hinafkin:20210807181358j:plain

 

 

2 進化要因についての筆者説

 これまで人類の進化について専門外の気楽さから、「熱帯雨林進化説」「糖質・DHA食進化説」「水中二足歩行説」「掘り・叩き棒手機能向上説」「メス・子ザル主導共同体説」「子ザル冒険・遊び進化説」「母系制家族形成説」など、従来の「サバンナ進化説」「肉食進化説」「追跡猟二足歩行説」「棍棒・投槍手機能向上説」「成人オス主導共同化説」「父系制家族形成説」とは異なる主張をしてきました。

 

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3 3段階進化説へ

 以上の分析から、「成人オスザル主導」のサバンナ移住を契機とした「1段階進化説」にたいし、私は「乳幼児期」「子ども期」「成人期(娘・母・オス)」の「3段階進化説」を考えるにいたりました。

⑴ 乳幼児期進化:言語能力の獲得

 これまで、サルからヒトへの進化は、二足歩行を中心に考えられてきましたが、イヌやチンパンジーやヒトの脳力が3~4歳ころまでに急速に高まることから考え、まず言語・コミュニケーション能力が先行して発達したと考えます。

 「二足歩行によって頭脳が大きくなった、喉の構造が変化して多様な発声ができて会話ができるようになった」とこれまで説明されてきましたが、サルやゴリラ・チンパンジーはすでに垂直に座りあるいは歩行しており、子ザルも垂直に親ザルにしがみついていることからみて、二足歩行により頭脳が大きくなり喉の構造が変わって言語能力が獲得されたという説には根拠がありません。

 なお、熱帯雨林では骨は溶けてしまうために残ることがないため、この時期の考古学的な直接証明はありませんが、熱帯雨林にゴリラ・チンパンジーボノボが棲んでいることと、原住民のコンゴイド(コンゴカメルーン・ナイジェリアなど)のDNAなどから推測する以外にありません。

 

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 縄文人に多いY染色体D型は、この地のE型のコンゴイドと早期に分岐していることや、ナイジェリアを流れるニジェール川流域原産のヒョウタンが若狭・鳥浜貝塚や青森・三内丸山遺跡から見つかり、この地がイネ科穀類の原産地である可能性が高いことなどは、この熱帯雨林が人類誕生の地であることを裏付けています。

 

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⑵ 子ども期進化:採集能力と共同性の獲得

 これまで、寒冷化により果物が減り、サルの一部がサバンナに押し出されて死肉をあさり、草食動物の追跡猟を行うようになり、ヒトは二足歩行を行うようになったと説明されてきました。意欲的な番組のNHKスペシャルの『人類誕生』においても、残念ながら西欧中心文明史観の「狩猟民族進化史観」「キン肉マン進化史観」「肉体先行・頭脳後行進歩史観」から一歩も抜け出せず、縄文人が採集漁撈民族であり、魚介芋穀類豆栗食であったことなどすっかり忘れています。

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 しかしながら、大型肉食動物の多いサバンナで、小柄で歩くスピードも遅い初期人類が棒を持っただけで生存競争に勝てたとはとても考えられません。実際、370万年前頃から東アフリカや南アフリカで発見されている二足歩行の化石類人猿がことごとく絶滅していることが「二足歩行先行説」の誤りを証明しています。「頭脳先行進化」の現人類だけが生き延びることができたのです。

 熱帯雨林の樹上の果物が減ったなら、まずは安全な熱帯雨林で地上採集活動に移行したと考えるのが自然です。肉食ではなく、低湿地・沼地・小川での採集漁撈による糖質・DHA食こそが脳の発達を支えたのです。

 チンパンジーが3歳で食の自立を果たせることからみて、この時期に水を怖がらないボノボの母親と子ザルは首まで水に浸かり足を伸ばして水中の川底や沼底のミミズや根粒菌などの採集活動を毎日、数時間、浮力の助けを借りながら二足歩行して行ってきたサルの生存率は高く、人類の先祖となったと考えられます。

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 手の器用さの獲得や道具の使用もまた、足の速い大型草食動物のサバンナでの追跡猟ではなく、熱帯雨林の土を手や棒で掘ってのイモ類や昆虫の採集、棒で魚やカエル、子ワニなどを叩いて獲るプハンセ(かいぼり:掻い掘り)漁などにより、獲得されたと考えられます。

 また好奇心旺盛で怖さを知らない子ザルたちは遊びながら新たな食料を見つけ、魚や小動物の狩りの方法を工夫し、行動範囲を広げ、仲間同士のコミュニケーション・会話能力を高めたと考えれられます。

 手慣れた方法で果物や葉・樹皮などを食べ続けたサルは樹上に残り、ゴリラ・チンパンジーボノボ・ヒトは地上採集も行うようになり、その中の好奇心・冒険心・工夫心・探検心・遊び心に富んだ子どもたちが現世人類への進化の原動力となったと考えられます。

 この進化は、サバンナではなく熱帯雨林で獲得されたのです。

 

⑶ 成人期進化(娘・母子・オス)

 それぞれのサルが食べ物を探して食べ、ボスザルにメスザルが統率された群れになり、個別に子育てをするサルの群れの段階からの大きな進化は、共同で食べ物を獲り、分配・交換を行い、その中で家族単位で子育てをおこなう社会の成立段階と考えます。

 これまで、その段階は熱帯雨林からサルが出て、サバンナで大型草食動物の死肉あさりや狩りを成人オスが共同で行い、獲物を群れに運んでメスに贈ってセックスし、子育てを行うようになった狩猟共同社会・家族として考えられてきました。

 しかしながら、肉食動物に襲われる危険が迫れば樹上に逃げることができる熱帯雨林で地上に降り、湿地や小川・沼で採集活動を行うようになった進化を考えると、その担い手は成人オスだけでなく、成人メスや子どもも同等の役割を果たしたと考えられます。また熱帯雨林が海岸に接したところでは、貝やカニなどが豊富に獲れ、塩分の確保はイモ・穀類食を可能とします。

 火の使用開始は落雷と火山が契機と考えられますが、図2・3のようにナイジェリアとコンゴの間のカメルーンにはアフリカ大陸で最も大きい火山の1つで「偉大な山」と言われるカメルーン山4095mが熱帯雨林の中にそびえています。

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 また、コンゴの東、熱帯雨林とサバンナの境に位置するナイル源流の高地湖水地方には「月の山」と呼ばれた万年雪の活火山・ルウェンゾリ山5109mがあり、赤道にそってケニヤ山・キリマンジャロと活火山が並び、噴火が火使用の契機となった可能性があります。なお、私はエジプトの上が白、下が赤の2色ピラミッドはこの神山を模したものと考えています。―「縄文ノート56 ピラミッドと神名火山(神那霊山)信仰のルーツ」「縄文ノート57 4大文明と神山信仰」参照

 このような環境のもとで、共同体・家族社会の成立はボノボのようにメスたちの子育ての助け合いと子ザルたちの遊びから生まれ、発情期だけでなくセックスをすることにより、メスザルはオスザルに子育て中の食料確保に協力させるとともに、用心棒としたと考えられます。オスザルはメスの関心を引くために美味しい大型ナマズやワニの捕獲に乗り出し、二足歩行能力が高まり、石器を付けた先の重い投槍で正確に獲物を倒すことができるようになった段階で、ステップの草食動物の狩りにでかけるようになったと考えれられます。

 この熱帯雨林における共同体と家族形成もまた、メスと子ザルが主導したのであり、それはヨーロッパの旧石器時代の女性像やギリシア神話、日本列島の縄文時代の母系制社会を引き継いだ各地の女王国などから明らかです。―「縄文ノート32 縄文の『女神信仰』考」「縄文ノート86 古代オリンピックギリシア神話が示す地母神信仰」参照

 

3 6~700万年かけた人類の3段階進化

 ではこの3段階の進化はいつ頃に起きたかですが、アフリカにおける類人猿や人類化石の発掘が東アフリカと南アフリカに偏っており、「サンプルの罠」に陥った化石学者の「サバンナ人類起源説」に対し、現在のところ熱帯雨林起源説には化石という確かな証拠はありません。

 エチオピア南アメリカで発掘された類人猿化石は、死地がそこであることは示せても、その地にいたサルから類人猿への進化が起きたのか、それとも熱帯雨林から移住してきてこの地で死んだのかについては証明できていません。

 NHKスペシャル『人類誕生』では「370万年前の人類(注:アウストラロピテクス・アファレンシス)は虫を食べていた!」「240万年前の人類(注:ホモ・ハビリス)のライバルはハイエナ!? 」「180万年前の人類(注:ホモ・エレクトス)はマラソンランナーだった!?」などとリアルなCGが放映していますが、図6のような一昔前の古くさい西欧中心文明崇拝の「キン肉マン史観」「肉食進化史観」の「直線的進化説」の空想レベルにとどまっています。

 

 

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 ゴリラやチンパンジーが現世人類とは別の道を歩んだように、アウストラロピテクス・アファレンシスやホモ・ハビリスホモ・エレクトスは、サルから進化して熱帯雨林を早期に出て絶滅した種族であり、ホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)やホモ・サピエンスは別系統のニュータイプなのです。―「縄文ノート64 人類拡散図の検討」参照

 最後まで熱帯雨林を離れることがなかったサルから、地上・水中の糖質・DHA食により知能・二足歩行・器用な手を獲得し、共同体と家族を形成したスマート(クレバー)なホモ・サピエンス(賢い人間)こそが、現生人類の直接の先祖なのです。その最も近い性質を伝えているのは水が大好きなボノボ(ピグミーチンパンジー)です。

 このアフリカ熱帯地域で誕生した現生人類の直接の祖先を突き止めるのは、DNAの変異の分析によりアフリカの熱帯雨林に住むゴリラ、チンパンジーボノボを含む)との分岐年代、ホモ・サピエンスの化石と石器の年代、Y染色体D型の縄文人とE型のコンゴイド(ニジェールカメルーンコンゴなどに居住)との分岐年代により推定することができます。

 

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 ウィキペディアは約1000万年前にヒト亜科からゴリラ族とヒト族が分岐し、約700万年前にヒト亜族とチンパンジー亜族が分岐したとし、国立科学博物館の図7ではそれぞれおおよそ800万年前頃、600万年前頃としています。

 

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 ホモ・サピエンス旧人類のネアンデルタール人は80年前頃、デニソワ人は60万年前とされ、現生人類の化石はエチオピアのオモ遺跡から発見された20万年前頃のものが最も古いとされてきましたが、2004年にモロッコで発見された化石と石器から30万年前頃が最も古いとされています。

 一方、Y染色体D型の縄文人がE型のコンゴイドと分かれたのは、崎谷満氏の図8によれば38300年前頃です。

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 このように700~600万年前頃から80万年前頃までの長い期間に人類はサルから3段階の進化を遂げ、80~60万年前ころに2つに分かれ、第1のグループは病虫害を避けて熱帯雨林から高地湖水地方、さらにはサバンナ、ナイル川下流から地中海東岸沿いに拡散し、第2のグループはアフリカの大西洋海岸沿いを地中海へと移動したのです。―「縄文ノート62 日本列島人のルーツは『アフリカ湖水地方』」「縄文ノート70 縄文人のアフリカの2つのふるさと」

 縄文人は4万年前頃に高地湖水地方コンゴイドと分かれ、ケニア海岸かアフリカの角(今のエチオピア)あたりから竹筏でインド洋を海岸沿いに東進し、インド南部からインド東部・ミャンマー高地をへて、日本列島へ黒潮にのってやってきたと考えます。―「縄文ノート43 DNA分析からの日本列島人起源論」「縄文ノート64 人類拡散図の検討」参照

 

4 縄文人からの人類起源論への提案

 私は門外漢であるため、図8のDNA分析結果が正しいのかどうかの判断はできませんから、この図をもとにした判断に過ぎませんが、Y染色体D型の縄文人はアフリカのニジェールカメルーンコンゴなどに住むE型のコンゴイドと38300年前に分かれ、日本列島にやってきたことが明らかです。

 この縄文人は、大陸から離れた日本列島で、異民族の侵略・支配を受けることなく平和な1万数千年を過ごし、活発に交流・交易を行い、海人族のスサノオ大国主一族は中国文明にならって独自に米鉄交易と妻問夫招婚による「委奴国→委国→倭国」の建国を行い、霊(ひ)・霊継(ひつぎ)宗教や神名火山(神那霊山)信仰、女王国など氏族・部族社会の縄文文明・文化を現代に伝えています。

 この縄文文明・文化は世界の母系制社会の地母神信仰などを示す「世界標準文明」の1つといってよく、世界各地の母系制社会段階の解明に大きな手掛かりを与えるものです。

 さらに「狩猟・牧畜・農耕」「略奪・戦争」「父系制」「絶対神一神教教」の「肉乳麦食文明」「森林破壊・石造文明」に対し、「採集漁撈→農耕漁撈」「交易和平」「母系制」「霊(ひ)・霊継(ひつぎ)宗教」の「芋穀豆栗魚介食文明」「森林・木造文明」という独自の発展をとげ、3・4世紀には各地に女王国があったわが国は、環境・食料・格差拡大・紛争戦争の危機に対し、西欧中心文明の見直しに向けたヒントを提案できると考えます。

 

□参考□

<本>

 ・『スサノオ大国主の日国(ひなこく)―霊(ひ)の国の古代史―』(日向勤ペンネーム)

 ・『邪馬台国探偵団~卑弥呼の墓を掘ろう~』(アマゾンキンドル本)

<雑誌掲載文>

 2017冬「ヒョウタンが教える古代アジア”海洋民族像”」(『季刊 日本主義』40号)

 2018夏「言語構造から見た日本民族の起源」(『季刊 日本主義』42号)

 2018冬「海洋交易の民として東アジアに向き合う」(『季刊日本主義』44号)

 2019春「漂流日本」から「汎日本主義」へ(『季刊 日本主義』45号)

<ブログ>

  ヒナフキンスサノオ大国主ノート https://blog.goo.ne.jp/konanhina

  ヒナフキンの縄文ノート https://hinafkin.hatenablog.com/

  帆人の古代史メモ    http://blog.livedoor.jp/hohito/

  邪馬台国探偵団         http://yamataikokutanteidan.seesaa.net/

  霊(ひ)の国の古事記論 http://hinakoku.blog100.fc2.com/